離婚してから始まる恋~念願かなって離婚したら、元夫が私を追いかけて辺境までやってきました~

(なんだか嫌な予感がする。)
半ば拉致される形で連れ出されたエレオノールは
言いしれぬ不安に苛まれていた。
馬車に乗ってしばらく経つが
未だに追っ手が来ないのは
自国の姫が連れ去られたことに
誰も気づいていないからだ。

ヴァリニア王国だったなら、
こんなことはありえない。
エレオノールは自国の警備の緩さに
愕然とした。
おそらく、
朝食を運んできた侍女が
誰もいない部屋を目の当たりにして
初めて私がいなくなったことに気付くのだろう。
彼らが気づく頃には、
私は既に国境を越えてしまっている。

こうなってしまっては
ライガンを信じるしかない。
エレオノールは覚悟を決めた。
彼はマルヴァリス皇太子は好人物だと言う。
本当だろうか。

世界情勢の変化に伴い、
ドレシア公国が変わろうとしているのは
エレオノールにも理解できる。
むしろ、
未だにのんびりと構えている
アルドヴァール大公国の方が大丈夫かと
不安になるぐらいだ。
でもだからといって、
ドラゴニア帝国の人間と関わりたくない。

実はエレオノールは
ドラゴニア帝国の要人と会ったことがある。
むろん、ヴァリニア王妃として。
両国が友好関係になかったこともあり、
ドラゴニア帝国にはあまり良い印象を持てなかった。
”帝国の人間は他国を
まるで属国のように見下しているのだな”と
そんな印象を受けた覚えがある。