離婚してから始まる恋~念願かなって離婚したら、元夫が私を追いかけて辺境までやってきました~

アルドヴァール大公国を含め、
フィオルガルデ連邦諸国が
比較的のんびりしているのは
自然の要塞に囲まれているおかげでもあった。
風光明媚な山々は外部からの侵略を防ぎ、
アヴァロン海に立ち込める霧は
海からの侵略を不可能にした。

しかし近年、
航海技術や造船技術が発展し、
アヴァロン海にも
たくさんの船が往来するようになった。
今は貿易目的の商船か、
旅行客を乗せた観光船のみだが、
軍艦がやって来てもおかしくはないのだ。

「そうだ、エル。僕と一緒にドレシアに来ないか。」
ライガンの突然の提案に、
さすがのエレオノールも困惑する。
「私がドレシアに行ってどうするの?」
「実はドラゴニア帝国のマルヴァリス皇太子が親善のためにドレシアを訪問しているんだ。ちょうと良い機会だからエルに紹介するよ。」
言うが早いが、
ライガンはエレオノールを抱えると
バルコニーをひらりと飛び降りて
物陰に待機させていた辻馬車に放り込んだ。