離婚してから始まる恋~念願かなって離婚したら、元夫が私を追いかけて辺境までやってきました~

ライガンとの秘密の逢瀬も
すっかり慣れてきたある日のこと。
ウキウキした気持ちを胸に留めて
帰路に着こうとしたエレオノールは
薄暗い木陰から突然声をかけられた。

「要注意人物とこそこそ会っているなんて、
感心しませんね。」

聞き覚えのあるその声は、
間違いなく前夫のエドリックである。
大国の王が、
田舎の地で一体何をしているのか。

「どうして貴方がここにいるの。」
「良くない噂を聞いたのでね。さぁ、行きますよ。」
エドリックは無表情のまま
エレオノールの腕をつかむと、
抵抗をものともせず
待機させていた馬車に押し込んだ。
そして自身もエレオノールの正面に着座すると
御者に指示を出して馬車を走らせた。

お蔭で車内の雰囲気は最悪だ。
一言も会話を交わさない上に、
張り詰めた空気で満ちている。
そんな空気をものともせず、
いつも通りの涼しい顔のエドリックと対照的なのが
エレオノールだ。

このことはいつから知られていたのだろう。
今までずっと監視されていたのだろうか。
エドリックが知っているということは、
たぶん父にもバレているのだろう。
絶望感がエレオノールの胸に広がっていく。
もうライガンには会えないだろう。

そして絶望感と同時に湧き上がってきたのは
エドリックへの怒りだった。
(なんでこの男がここにいるわけ!?もう私たちは赤の他人じゃない。元妻を監視するなんて信じられない。)