備えあれば憂いなしと。


私に教えてくれたシオンに応えられるよう、私はここを超えていく。




「久々に燃えちゃうなー。」


「お嬢はシキの兄ちゃん怖くないん!?」


「会ったこともないけど怖くないよー。向こうは会いたくて会いたくて堪らないって感じなんだろうけどねー。」


「…お嬢に、会いたい?」



そうまでして私に拘る理由は、当然この火龍の力なんだろうけども。


そこでカイが思い出したようにハッとする。




「シキの兄ちゃん…いや、まさかな。」


「え?」


「…あの人、お嬢のおかんにめちゃくちゃ惚れてたんよ。」


「はい?」



親の昔の恋愛事情なんて、別に興味はないが。


エゼルタの総司令さんはママが好きだった。それが私に会いたい理由にもなり得るのかは分からない。




「今まだ独身やったよな…。母がダメならその娘って…ないと信じたいけど、あの人女癖悪いしな。」


「いやないでしょ。普通に歳の差すごいって。」


「あの人に歳の差なんて障害にならん。お嬢マジで気を付けてな。絶対近付いたらあかんで。」


「うん、元々そのつもりだよー。」



そんな恋愛話は関係なく、今回別に私はエゼルタ軍に近付くことはしない。





「国を出てからずっと、総司令さんは私に会いたいって執念がすごいから。」


「執念…確かに追い回され続けてるもんな。」


「だから会ってあげない。」


「うわ、恋の駆け引きみたい。」



違います。


私にそんな技術はございません。