そんなパパに、一度も負けたことがないと言うエゼルタの総司令さん。
私の憧れるシオンの師でもある人。
「…カイは私じゃ敵わないと思う?」
「悪いけどな。あの人に軍略で挑んで敵う人間なんておらん。」
「…そっかー。」
はっきり勝ち目がないと言われた。
これは初めてのことです。
私は戦神として、アテナの化身として讃えられて来て。それは勝利の象徴のようなものだったから。
「戦のことに関してはさ。私パパに怒られてばっかりで、勉強にはなるんだけど。敵わないなってずっとがっかりしてたの。」
「…そんな偉大な人でも勝たれへんねん。」
「逆に言えば。ここを超えたら私、パパを初めて超えたことになるよね。」
「は…はあ?」
これは寧ろ好機。
私の闘志を逆に燃やす事由になる。
「負けたことないのは私も同じ。初めての敗北を味わうのはどっちだろうね。」
「お嬢マジでやる気なん?」
「無論だよ。真っ向から軍率いられないのが残念だけど。そこは仕方ないねー。」
「…どないしよ。」
カイは年齢のことからしても、総司令さんの全盛期も見て来たんだろう。
だから不安が拭えないのは分かる。
「…もう叶わないと思ってた。ずっと追いかけてたパパを超えられる千載一遇のチャンスを、私は逃したくない。」
「…オウスケ!?お前マジで頼むぞ!?」
私の説得をようやく諦めたカイが、おーちゃんに何かを頼んでいる。

