それにしても、まさかおーちゃんにプロポーズされる日が来るとは思わなかった。


ここでは結婚願望ないって声を大にして言い続けていたのに。



未だカイに吠え続けているおーちゃんに目を向ける。




「…おーちゃん。」


「ん?また断り文句か?」



視線だけこちらに向けて、嫌そうな顔で私を見ている。


嫌そうにされているが伝えねば。






「…嬉しかった、から。」


「……。」


「…ありがと。」


「……え、もう襲ってええの。」



血迷ったおーちゃんの頭をスパンッとカイが叩いた。




「あかんに決まっとるやろ。盛んなアホ。」


「これに抗えって無理ない?」


「…三人でやる?」


「……。」


「冗談や。マジのドン引きすな。」


「…冗談の温度やなかったからキショイ。」



仲良く二人が話してるの和むなー。


でも自分が不利になるのを恐れたカイが、話題を変える。




「例の箝口令何やったん?」


「…伝説の男が出陣決めたらしい。」


「伝説の…って、は?」


「エゼルタ現総司令。お嬢を本気で取りに来るって。」



自分で聞いておいて、開いた口が塞がらないカイ。


その様子から凄いことが起こっているんだろうが、私にはそれがどれだけ凄いことなのかが分からない。




「あかんあかん。お嬢今からでもアレンデール戻さな。」


「え、私帰らないよ?」


「あかん。絶対あかん。相手が悪過ぎるわ。」


「…ここに居たら、ご迷惑になる?」



それならばここを離れるのは仕方ないが、アレンデールには帰らない。




「それはないけど、あの人は相手にしたらあかんねんて。」


「迷惑じゃないならよかったー。」


「お嬢ちゃんと聞き。エゼルタの総司令言うたら、戦負けなしの大物や。全盛期はお嬢のおとんでさえ勝ったことない。」


「…え?」



パパが…勝ったこと、ない?




「やから分かるやろ。とりあえずアレンデールなら鬼人が死んでも守ってくれるし、ほとぼり冷めるまで大人しくしとき。」


「…うん、やだ。」


「やだて言うてる場合ちゃう。」


「ハルが私を守らなくて済むように国を出たのに。そんな理由で戻れないよ。」




私の中で、パパはハルと同じくらい強くて。


ハルに加えてちゃんと軍略を考えられる人だから、もう隙なく尊敬に値する人。親バカなのがたまに傷だったくらい。