「…よし、本読もう。」
「お前考えるの放棄したな。」
「……。」
「…無視か。」
だってだって!!!
もし私の予想が正しかったら。
どうするの。
前にアキトと恋愛を戦に見立てて話をしたことがあった。
『要は勝ち目が出てから伝えりゃいいってことか。』
そう、言っていた気がする。
現状で私に恋愛願望はないので、勝ち目があるとはとても言えない。
…だから大丈夫だ。
アキトはきっと私に気持ちを伝えることはしない。見て見ぬフリは可哀想なことかもしれないけど確証もない。
それに、伝えられても。
私はきっと、応えてあげられない。
「…読まねえのかあ?」
「読ませてくれなかったんでしょ。」
白々しいアキト。
もういつのまにか私を掴んでいた手は離れていて。アキトは私の横にゴロンと転がっている。
「もう邪魔しねえよ。」
「…どうも。」
私もその横で、再び本を開いた。
数冊ひたすら読み続けたものの、睡眠不足の身体を睡魔が襲う。
読みたい、眠い。読みたい、眠い。
しばらく拮抗したこの勝負を制したのは睡魔。
私は気が付けばそのままうつ伏せで眠ってしまい。
それをただ眺めていたアキトが薄く笑う。
「餓鬼かよ。」
私に布団を掛けて、開いたままの本を閉じ。
そして優しく抱き締める。
「無駄に気付かせて悪いことしたなあ。」
私がアキトの気持ちに勘付いたことさえ、読み取ってしまう。
ハルも顔負けなほど、私の…と言うか人の気持ちに敏感なアキトは、悪くもないのに悪いと思ってしまっていて。
その罪悪感を抱えながらも、私を離せない。
…どう考えても、馬鹿なのはアキトの方だ。

