いざ、酒場のドアの前に立つと。
どんな顔で私と会えばいいのか分からず少し考える。
しかし意を決して、そのドアを開く。
中にはいつものようにカウンター内でお仕事しているカイと、その前に座って基盤と駒を触る私。
「あ、おーちゃんおかえりっ!」
「…っ。」
「ええっ?何っ!?」
何日と離れたわけでもないのに。
帰って来て、私と目が合ったおーちゃんが瞬間移動して私を抱きしめる。
「…。(嫌われへんように。甘えられるように。寛大な心で。否定はしたらあかん。)」
「お、おーちゃん?」
そんなおーちゃんを、私もカイも不安いっぱいの目で見る。
「…。(白狼の言葉も王子の言葉も、分からんけど。やっぱり俺は、死なせたくない。)」
「具合悪い?大丈夫?」
「…。(離したく…ない。)」
「カイどうしよう…!?」
思わずカイに助けを求めるものの、私の視界はおーちゃんの胸でいっぱいで何も見えない。
二人とも何で黙ってるの!?
「…お嬢。」
「あ、うん?おーちゃんどうしたの?」
「俺、決めた。」
「決めた…うん?」
何かが決まったらしい。
良く分からんがおめでとう。そして離してくれ。
「俺と結婚してくれ。」
パリンッ。
カイが持っていたグラスを落としたんだろう。そんな割れた音がした。
…結婚って言った???
誰が?おーちゃんが?
誰と?私と?
「…ごめんなさい?」
「早すぎひん!?悩め!?」
とりあえず断ってみた。
「急に結婚なんてどうしたの?」
「結婚したら家族になる。」
「…そうだね?」
「俺はお嬢と家族になる。」
頑張っています。
私は苦手なこの手の話にも関わらず、おーちゃんの気持ちを読もうと頑張っているんです。
ベストな回答を探しているんです。

