(二)この世界ごと愛したい




いざ、酒場のドアの前に立つと。


どんな顔で私と会えばいいのか分からず少し考える。



しかし意を決して、そのドアを開く。


中にはいつものようにカウンター内でお仕事しているカイと、その前に座って基盤と駒を触る私。




「あ、おーちゃんおかえりっ!」


「…っ。」


「ええっ?何っ!?」



何日と離れたわけでもないのに。


帰って来て、私と目が合ったおーちゃんが瞬間移動して私を抱きしめる。




「…。(嫌われへんように。甘えられるように。寛大な心で。否定はしたらあかん。)」


「お、おーちゃん?」



そんなおーちゃんを、私もカイも不安いっぱいの目で見る。




「…。(白狼の言葉も王子の言葉も、分からんけど。やっぱり俺は、死なせたくない。)」


「具合悪い?大丈夫?」


「…。(離したく…ない。)」


「カイどうしよう…!?」



思わずカイに助けを求めるものの、私の視界はおーちゃんの胸でいっぱいで何も見えない。


二人とも何で黙ってるの!?




「…お嬢。」


「あ、うん?おーちゃんどうしたの?」


「俺、決めた。」


「決めた…うん?」



何かが決まったらしい。


良く分からんがおめでとう。そして離してくれ。








「俺と結婚してくれ。」




パリンッ。


カイが持っていたグラスを落としたんだろう。そんな割れた音がした。




…結婚って言った???



誰が?おーちゃんが?


誰と?私と?





「…ごめんなさい?」


「早すぎひん!?悩め!?」



とりあえず断ってみた。




「急に結婚なんてどうしたの?」


「結婚したら家族になる。」


「…そうだね?」


「俺はお嬢と家族になる。」




頑張っています。


私は苦手なこの手の話にも関わらず、おーちゃんの気持ちを読もうと頑張っているんです。


ベストな回答を探しているんです。