(二)この世界ごと愛したい




シオンの中で、思い浮かべた私は。


度々シオンに軍略囲碁を挑み、十回に一回勝てるか勝てないか。それに毎回心血注ぐ姿。




「どちらかと言うと、お前が心配すべきは糞親父の方だ。」


「…リン、まさかここも勝っちゃうの?それはそれで…色々大問題だけど?」


「…さあ?」



正直なところ、シオンにとってその戦の勝敗はそんなに気になることではない。


仮に私が捕まっても、連れて来られる先がこのエゼルタだから。




「負けたらここに繋いどく。」


「それやってること鬼人と一緒じゃん。」


「…それもそうか。ハルの病原菌は本当にしつこいな。」


「はあ?」



トキはそんなシオンに若干呆れると同時に、誰よりも信じられる兄が大丈夫だと言った。


その事実に焦りは消えていた。




「…それより、ハルの戦どうなった?」


「そっか。シオン終戦前から篭ってたんだ。アレンデール軍が勝ったよ。」


「ソルの将は?」




「…生きとる。」



ぽつりと、そこを答えたのはおーちゃん。





「…ハルでも討てない、か。」


「お嬢があんまり一人で動かんようにって、したいんやけど。あのお嬢フラフラと勝手に行きよるし。」


「……。」


「あの二人は会わせたらあかん。」


「…もう無理かもな。」



シオンもそこを食い止めるためにハルを焚き付けた。


にも関わらず、この結果。







「神はどうやら、余程引き会わせたいらしい。」


「神…?」


「…追加でハルに追わせても無駄か。」


「天帝に聞いたけど、アイツをお嬢に近付けたらあかんって白狼が言うたんやろ?」


「だったら?」


「意味が分かってそう言うたんやったら、ほんまに頼むで。俺が近くにおる時は俺が動く。」