シオンの中で、思い浮かべた私は。
度々シオンに軍略囲碁を挑み、十回に一回勝てるか勝てないか。それに毎回心血注ぐ姿。
「どちらかと言うと、お前が心配すべきは糞親父の方だ。」
「…リン、まさかここも勝っちゃうの?それはそれで…色々大問題だけど?」
「…さあ?」
正直なところ、シオンにとってその戦の勝敗はそんなに気になることではない。
仮に私が捕まっても、連れて来られる先がこのエゼルタだから。
「負けたらここに繋いどく。」
「それやってること鬼人と一緒じゃん。」
「…それもそうか。ハルの病原菌は本当にしつこいな。」
「はあ?」
トキはそんなシオンに若干呆れると同時に、誰よりも信じられる兄が大丈夫だと言った。
その事実に焦りは消えていた。
「…それより、ハルの戦どうなった?」
「そっか。シオン終戦前から篭ってたんだ。アレンデール軍が勝ったよ。」
「ソルの将は?」
「…生きとる。」
ぽつりと、そこを答えたのはおーちゃん。
「…ハルでも討てない、か。」
「お嬢があんまり一人で動かんようにって、したいんやけど。あのお嬢フラフラと勝手に行きよるし。」
「……。」
「あの二人は会わせたらあかん。」
「…もう無理かもな。」
シオンもそこを食い止めるためにハルを焚き付けた。
にも関わらず、この結果。
「神はどうやら、余程引き会わせたいらしい。」
「神…?」
「…追加でハルに追わせても無駄か。」
「天帝に聞いたけど、アイツをお嬢に近付けたらあかんって白狼が言うたんやろ?」
「だったら?」
「意味が分かってそう言うたんやったら、ほんまに頼むで。俺が近くにおる時は俺が動く。」

