(二)この世界ごと愛したい




嫌われたくはないとおーちゃんが焦る。




「…結局、彼女はハルを求める。」


「ハルは話せば良い奴やけど、お嬢に対しては…ちょっと異常よな。」


「こんなこといつまでも続けられないことはハルが一番分かってる。だからその時に、彼女をこの世に引き留める何かが必要。」


「な、何か…って?」


「知るか。自分で考えろ。」



シオンにしては饒舌に喋った方だ。


けどもう話すことはないらしく、読書の途中だったんだろう本に目を向けてしまう。




「リンのことになると本当良く喋るね、シオン。」


「…別に。」


「それより父さんのこと、どうするの。」


「俺が出るって言ったら断られた。その後も俺と話すのを向こうが避けてる。どうしようもない。」



不安で仕方ないトキと、案外冷静なシオン。


トキは私を心配するわけでもないシオンが意外で、思わず詰め寄る。




「父さんが自ら兵を率いるなんて只事じゃないよ。リンが危ないじゃん。」


「…危ないって?」


「どんな手使うか俺でも読めないよ。寧ろ読みたくもない。しかもリンのことだからまた無茶ばっかりするだろうし。」


「……。」



シオンは手元の本をパタンと閉じる。


そして、その科学の本を見て。少しだけ私を思い浮かべる。





「…問題ない。お前が心配するようなことにはならない。」


「え?」


「どうにかするだろ。」


「…二人揃って…何なの。意味分かんない。」


「は?」


「リンもさ、シオンが心配なのかと思ったらシオンは大丈夫だって言うし。シオンも同じ感じじゃん。何、二人実は連絡取り合ってる?」




そんなことはしておりません。


この家を見て、まずそんなこと出来る隙もありません。




「…じゃあ、彼女に伝えて。」


「え?今度は何?リンに策でも施すの?」


「備えは怠るなって。」


「…何それ、面白くない伝言。」