嫌われたくはないとおーちゃんが焦る。
「…結局、彼女はハルを求める。」
「ハルは話せば良い奴やけど、お嬢に対しては…ちょっと異常よな。」
「こんなこといつまでも続けられないことはハルが一番分かってる。だからその時に、彼女をこの世に引き留める何かが必要。」
「な、何か…って?」
「知るか。自分で考えろ。」
シオンにしては饒舌に喋った方だ。
けどもう話すことはないらしく、読書の途中だったんだろう本に目を向けてしまう。
「リンのことになると本当良く喋るね、シオン。」
「…別に。」
「それより父さんのこと、どうするの。」
「俺が出るって言ったら断られた。その後も俺と話すのを向こうが避けてる。どうしようもない。」
不安で仕方ないトキと、案外冷静なシオン。
トキは私を心配するわけでもないシオンが意外で、思わず詰め寄る。
「父さんが自ら兵を率いるなんて只事じゃないよ。リンが危ないじゃん。」
「…危ないって?」
「どんな手使うか俺でも読めないよ。寧ろ読みたくもない。しかもリンのことだからまた無茶ばっかりするだろうし。」
「……。」
シオンは手元の本をパタンと閉じる。
そして、その科学の本を見て。少しだけ私を思い浮かべる。
「…問題ない。お前が心配するようなことにはならない。」
「え?」
「どうにかするだろ。」
「…二人揃って…何なの。意味分かんない。」
「は?」
「リンもさ、シオンが心配なのかと思ったらシオンは大丈夫だって言うし。シオンも同じ感じじゃん。何、二人実は連絡取り合ってる?」
そんなことはしておりません。
この家を見て、まずそんなこと出来る隙もありません。
「…じゃあ、彼女に伝えて。」
「え?今度は何?リンに策でも施すの?」
「備えは怠るなって。」
「…何それ、面白くない伝言。」

