(二)この世界ごと愛したい




「俺、白狼に聞きたいことがあんねん。」


「……。」


「ハルに会った。」


「…それで?」



ずっとシオンの考えを教えて欲しいと思っていたおーちゃん。


その疑問が、ようやく晴れようとしている。




「お嬢がハルと離れたくないんは分かった。でも、納得は出来んかった。」


「……。」


「ハルがおらんかったらお嬢が今ここにおらんとしても、俺は何が正解か分からん。やから白狼がアレンデールを出たお嬢が正しいって思った理由が知りたい。」


「……。」



シオンはただ黙る。


しばらく黙って、小さく口を開いた。




「…ムカつくから。」


「…は?」


「それで威張ってるハルに殺意が芽生えるから。」


「いや…は?」



思っていた答えとは、全然違う。


おーちゃんはせっかくここまで来たのに、シオンが珍しく馬鹿なことを言うので信じられない様子。





「…彼女がハルを呼ぶのも気に入らない。」


「…あ、もうええで。分かった。」


「ハルは馬鹿でウザくて頭も悪い。」


「もう単なる悪口やん。」



ただ言いたいだけかと、おーちゃんは呆れ始める。







「…ただあの檻を開けてやればいい。それをしないハルを殺したい。」


「檻…て。お嬢はもう出て来てるやん。」


「それはハルが開けたんじゃない。ハルが開けないと意味がないんだ。」



ちゃんと認めてもらって、ハルが開けてくれるその場所から外に出たい。ハルの口から聞きたい。


そう思っている私の心理を、シオンはいつから知っていたんだろう。





「そんな残酷な奴から離れて、少しずつ忘れさせてやればいいと思った。」


「忘れさせる…。」


「でも殺そうとしたら嫌われた。」


「き、嫌われる…!?」