(二)この世界ごと愛したい




一点で止まったトキが、その場の板をコツコツと五回叩く。


すると下からその板が外れ降りられるようになった。




「やっほー。」


「…?」



部屋に降りて来て可愛く挨拶したトキに、シオンが首を傾げたのは。


再会した弟が、美少女を連れて来たから。




「…俺、見合いはしない。」


「「は?」」



トキが女嫌いであることを熟知しているシオン。


だからこの美少女がトキの想い人だとは思えず、自分に宛てがうために連れて来たと言う発想に至ったらしい。




「だっ…んむっ!」


「ちょ、俺も笑い堪えるの必死なんだから今は叫ばないでっ…!」



咄嗟におーちゃんが叫ぶのを口を押さえて阻止したトキ。


それを見てシオンはまた不思議そうにする。




「…駆け落ちすんの?」


「こっ、いつ…!俺や!オウスケ!」


「…瞬兎?」


「誰がお前と見合いして弟と駆け落ちすんねん!?」



もうお腹を抱えて静かに笑い転げるトキさん。


仲良くて何よりです。




「…彼女は?」


「リンは来てないよ。箝口令の中出られなくなるの嫌なんだって。」


「そうか。」


「箝口令の中身はさっきユイ姫に聞いた。シオン今からでも父さん止められない?」


「無理。」



キッパリと言い切ったシオンを見て、トキは肩を落とす。




「…あんたは何しに来たの。」



そんなシオンがおーちゃんに視線を向ける。