「おっそいわ。」
「ごめんごめん。嫌な婚約者でね。」
「ほんまに。お嬢のこと散々言うてたけど、あんなん足元にも及ばんわ。」
「瞬兎さんもリンに落ちちゃったのか。リンの毒牙は恐ろしいね。」
そんなことを言われては、おーちゃんはまた真っ赤になって可愛く怒る。
女装してるのも相まって。それは女嫌いのトキでさえ溜め息が出るほどに。男だからトキに効くのかもしれないが。
「ちょ…やめてやめて。俺ソッチの趣味ないから。」
「んなっ!?お…俺もないわっ!!!」
「うるさい。とりあえずもう箝口令の中身は知っちゃったけど、シオンがどう動くのかだけは聞いときたいから。このまま向かうよ。静かにね。」
まだ文句が言い足りないおーちゃんだが、ぐっと堪えてシオンの元へちゃんと静かに歩く。
「あの馬鹿女が俺に話したもんだから、あんまり時間ない。レンも迎えに行ってすぐこの国出なきゃ。」
「…エゼルタの総司令、不敗伝説の男か。」
「相手が悪すぎる。俺等が戻ってリンに知らせないと…リンは本当に捕虜にされ兼ねない。」
「っ!」
二人はとにかく急いだ。
無事に実家を捉えると、いつもの倍はいる警備の数にトキは驚きつつも中へと足を踏み入れる。
「トキ様、おかえりなさいませ。」
「ただいま。ちょっと部屋に置いてる資料取りに来たんだけど、立て込んでる?」
「…トキ様のお部屋ならば問題ございません。どうぞ。」
家の中も警備の人が多いが、トキは一旦捨て置き自室まで辿り着くことに成功。
そしてすぐに部屋の天井の板を外し、屋根裏へ登る。
軽々と追い掛けるおーちゃん。
「物音立てたらアウトだからね。」
「忍者みたいやなー。」
忍足でシオンの部屋を目指す二人。
おーちゃんは忍者体験に心を弾ませていた。

