とりあえず本が読みたい私。


ここは、アキトを早めに宥めてこれ以上心乱されることなく穏やかになりたい!!!




「…もう離して、ほしい。」


「俺は、俺を好きな女には手は出さねえ。」


「そ、そうなんだ。」


「本気になられても面倒だからなあ。」




それはそれは。


初耳ですけど、私には関係ないことなので。



とりあえず早く離して!?




未だに片手は本の上で掴まれたまま。顔も無理矢理に上げさせるためにもう片方の手は顔に添えられたまま。





「ね、本当に…近…い。」


「俺は本気になれねえから、俺に本気にならねえ女しか相手しねえ。」


「本気に、なれない…?」


「もう俺の心は持っていかれてるからなあ。」




つまり、アキトには好きな人がいるから。


だからアキトのことを好きにならない人としか遊ばないってことか。



相手の感情に重きを置くアキトらしい考え方だとは思うけど、何故そんな説明をわざわざ私に。わざわざこんな至近距離で話すんですか。





「…が、頑張れ?」


「へえ。頑張っていいのか。」




アキトの何やら複雑そうな恋を応援してみた。


でも、アキトの目が何故か鋭く光る。





「だって私には…関係なっ…!?」




…関係ないから。



そう突き放そうとしたら、アキトが再び私の唇に噛み付いた。






「あ、アキトっ!!!」




私は強引にアキトを押し退け離れる。





「あ?」


「…ちょっと待って。」




アキトは想い人がいるらしい。



頑張れと言ったら、頑張っていいのかと聞かれて。


私は無関係だと言おうとしたのを阻止された。






いや、こんなこと考えるのは止めよう。


違ったらめちゃくちゃ馬鹿みたいだし!!!





アキトの想い人は実は私ではないのかと、一瞬だけでも考えてしまった。