「謝ったよね!?」


「わざとかもしれねえじゃねえか。」


「わ、わざとじゃない!!!」


「どうだかなあ?」




いつものニヒルな笑みを浮かべている。


意地悪すぎない!?




「大体アキトは日常茶飯事してるくせに。私にいちいち突っ掛からなくていいじゃん。」


「日常茶飯事?」


「彼女が何人いるかは知らないけど、私をその不特定多数の人と一緒にしないでください。」




私が転がっている寝台に、アキトが近付く。




…久々に私の警報が鳴る。


この雰囲気はまずい。これまでの経験からして逃げねば捕まる。




私は素早く起き上がる。


この部屋から一旦出ようと考え、どうせなら本は持って行こうと側に置いた本に手を伸ばした。








「逃げんのかあ?」




相も変わらず、ニヒルな顔で。


その手が、本に伸ばした私の手を掴んだ。






「他の女と、お前を一緒にすんなって?」


「…それが変?」


「いや?お前に言われるまでもねえけど?」


「じゃあ別に私にちょっかい出さなくても、アキトは間に合ってる…んっ…!」





今度はアキトから。


重ねられた唇。




すぐに唇を離したアキトは、続けて私に難問を投げかける。





「一緒に出来ない理由が、分かるか?」


「っ…ちょっとまず離れて!」




唇が離れたとは言ってもまだ至近距離にあるアキトの顔。


私は火照る顔を隠すために俯く。





「こっち向いて、その出来の良い頭で考えてみろ。」


「っ!!!」




私の顎に手を添えて、無理矢理に顔を上げさせられる。







「今のその顔、椿の花びらみてえ。」




もう、穴があったら入りたい…。