驚きのあまり私を離したハルから、パッと離れ。


笑顔で手を振ります。




「私の限界来たら呼び出すねー。」


「俺の限界は三秒後だ。」


「ハルは自分で何とかしてー。」



ブツブツ文句を言いながら、馬に乗ったハル。


その姿もとっても格好良いです。本当は離れたくないのは私で。本当は三秒と持たないのは私です。




「…リン。」


「うん?」


「頼むから泣くなよ。笑ってろ。」


「…うん。」



胸の痛みをどうしても共有してしまう私達。


私が泣くと、ハルにも及んでしまう痛みからハルを守りたいので。



私はもう一度ハルに笑顔でまたねと伝えた。


それを見届けて走り去るその背中を追い掛けてしまいたい私は、いつまで経ってもハル離れが難しい。






「…また…言ってくれなかった。馬鹿ハル。」



ハルの背中を見送って、私は店内に戻る。




「びっくりするくらい寂しそうな顔してるで。お嬢大丈夫か。」


「言わないでー。情けなくなるから。」



店内に入ってすぐにカイにつっこまれる。




「俺、ハルがお嬢から離れへんと思てたけど。どうも逆らしいな。」


「おーちゃんまで…。」



バレてしまった。


仰る通り。今も昔も変わらず、ハルから離れられないのはどう見たって私の方なんです。





「…ん?ハル?」


「んあ?」


「おーちゃん、ハルって言った…?」


「あー。俺のことも呼び捨てされたし、俺も今後ちゃんと名前で呼ぼう思て。」



何なんだ、その可愛い理論。




「…私のことは呼んでくれないのに?」


「は…はあ!?お嬢は名前呼んだらあかんからしゃあないやろ!?」


「ハルばっかりずるい。」


「ずるいって何やねん!?」



いいよなー。ハルはお得だなー。


私は身バレすると良くないので仕方ないっちゃ仕方ないが。