「…はー。可愛い。」
「牽制の仕方が幼稚やな。」
「幼稚でも何でも、この国にだけは渡したくねえもんでな。」
パルテノンを毛嫌いするハル。
どちらかと言えば、今回のソルや、シオンの居るエゼルタの方がハルは嫌いそうだが。
「…神の地が気に入らんの?」
「ああ。」
「確かに神も仏も嫌いそうな頭してるわ。」
「好きでもねえし嫌いでもねえ。俺はリン以外に興味もねえ。」
神の土地。
それがパルテノン。
だからママはこの国の出身で、たまたま私達三兄弟はアレンデールでその血を受け継いだ。
「興味ない?」
「嫌ってんのはリンの方だ。行く行く導かれて神ごときに気を悪くさせられんのが嫌なだけだ。」
「…そこは出来た兄貴やな。」
「どう思おうが勝手だが、ここでリンを囲うなら覚悟はしとけよ。」
ハルからおーちゃんへ。
覚悟をしろと言葉が投げられた。
「仮に泣かすようなことがあってみろ。アレンデール全軍で叩き潰す。」
「…いや、泣かしとったんお前やけど。」
「ああ!?いつだ!?」
「戦の時。お前が帰ってけーへんし心配掛けまくるから、お嬢めちゃくちゃ泣いとったけど。」
「かっ、可愛過ぎか!?」
こうしてまた人様の前で悶えるハル。
やめてと言った私の言葉などきっと覚えてはいないことだろう。
「人に泣かすなって頼む前に、お前がしっかりせんかい。」
「…悔しいが分かった。」
「素直か。」
「俺はリンに関することでは、張る意地もプライドも持ち合わせてねえ。」
カイは二人の会話を静かに聞くだけで、口を挟むことはしない。
「お前も重症やけど、お嬢はそんなお前がおらな生きていかれへんようになってしもたんやな。」
「不満か?」
「その答えを聞きに、白狼に会いに行こう思てんねん。」
「…へえ。」
ハルはどこか自嘲も含んで笑う。
シオンの答えが知りたいと言ったおーちゃんを止めることはしない。

