またハルの馬鹿は何てことを言い出すんだ。


そして、人を浮気者呼ばわり。




「お前俺が好きなんじゃねえのか。」


「…それが?」


「その顔がムカつく。」


「は…はあ?」



ここに来て、ハルは子供のように不貞腐れ始めた。


そして、顔がムカつくって。ハルが私にこんな暴言を吐くのは初めてのことだ。




「それで俺に帰れって?」


「…あんなに…。」



この旅行は、確かに都合の良いことばかりじゃなかった。


それでも私は楽しかったし。ハルと一緒にいられて幸せだと感じていた。


だから、あんなに好きだって死ぬ程伝えたのに。




「あ?」


「ハルが世界で一番好きだって、あんなにあんなに言ったのに!?それなのにどこで拗ねてんの!?」


「……。」


「心配しなくてもハル以上に好きな人なんて私には出来ないから!!!」



もうありったけの力で言い切った。


言い切って…冷静になってみれば、ここはカイのお店で。カイとおーちゃんもこの場にいる状況に、途端恥ずかしさが襲い来る。



堪らず俯いた私へ、ハルは意地悪そうに笑った。





「ってわけなんで。俺のリンに手出したら国ごと木っ端微塵にする。忘れんなよ。」



そこで、私は嵌められたのだと察した。


これは恐らく何もしてないおーちゃんへの可哀想な忠告。それに加えたパルテノンへの牽制。




「悪いリン。これもお前のためだ、許せ。」


「ゆ、許せない…。」


「一緒に帰るなら説教くらい聞いてやる。」


「帰らない!ちょっと頭冷やして来る!」



ハルにしてやられるとは。


私に想いを伝えてくれたおーちゃんの手前、この場にいるのがすっごく辛いもので。私は堪らず外へ飛び出した。