(二)この世界ごと愛したい




この稽古は、本当にそのまま集団戦法を身をもって体験させるためのもの。


隊員達は基本、乱戦の中戦うことの方が多い。


その中で、自分の役割だったり戦い方だったりをしてもらわなければならない。これが出来るか出来ないかでその隊の単純な生存率が上がる。



更にボール所持者は逆に、大人数相手の対応を身に付けることが出来ると言う利点付き。




ハルにしては理にかなった稽古を良く思い付いたなと、感心したことを覚えている。





「…今日はここまでにしようー。」




稽古終了を告げる。



私が結局、今日ボールを渡したのは五十人程。アキトも同じくらい。サクはうっかり取られることもありつつで、若干それよりも多いけども。



凡そ二百人弱。





「トキ。初めのこの二百人は有力だと思うよ。参考までにー。」


「そうだね。読み通りな人間もいるけど新しい選択肢も増えた。」




…新たな将軍候補。


アキトとサクはどうだか知らないが、私はその選抜も兼ねていた。




「あー疲れた。明日は剣ありでもいいかなー。」


「リン、あっちのご褒美まだじゃない?」


「…忘れてた。でも選択制にしたからってそんな人数いない…でしょ……うん?」




アキトとサクの班でボールを奪えた人。


その中で選択制にしたご褒美。



私の後ろに既に整列した勝者達は、百人強。





「え、あの…みんな欲しいものないの?」


「「チューでお願いします!!!」」




みんな無欲だね!?!?


唇の水分全部なくなりそうだよ!?!?




自分で提案しておきながら、判断を誤ったと後悔しながらもこの列の皆さんへご褒美をプレゼントさせていただきました。