これで他の隊員達にも火が付く。
またさらに過酷なボール遊びをすぐに再開。
アキト班では、未だにボールを奪わせてないアキトが奮闘している。
「くっ…羨ましい。」
「アキトよそ見しないで、ボール取られるよ?」
アキト班の見学をしているトキに怒られつつ。
やはり、アキトはディオンの戦前に手合わせした時よりもさらに力を付けたようで。
私の稽古風景に目を向けつつも、ボールを所持し続けている。
「アキト、リンの意図に早く気付きなよ?」
「は?」
「あのリンが本気でやったら誰にもボールなんか取れないって。」
「……。」
ここでアキトはようやくこの稽古の目的を理解する。
理解したと同時に自分の危険に気付く。
「待て。そうなると俺の財布は…。」
「軍の経費からは出さないからねー。」
「と、トキ待て!頼む!そうじゃねえと俺はまた財布が空になる!!!」
「じゃあ俺サクにも促してくるよ。サクもう鬼ごっこになってるから。」
自分の財布を憂い葛藤するアキトを見て、トキは楽しそうに笑って。
そしてもうボールを抱いて逃げ回るサクの元へ向かう。
トキがサクにもこの稽古の意図を理解させ、アキト同様に己の財布を思い絶望する。
そして、私は私の稽古を続けつつもそれぞれの班の動きが変わったのを見て。
「じゃあアキトとサクの班の人達は、そのままのご褒美で行くか私のご褒美に変更するか選択制にしてくれてもいいよー。もし良ければだけどねー。」
そんな私の計らいで、更に大盛り上がりの二班。
サクは少しほっとした表情を見せたが、アキトはまた更なる葛藤に苛まれる。
「…財布が空になる方がマシじゃねえか。」
そんな小さな愚痴を漏らしつつ。
三班各々こうして稽古を続け、すっかり日が高く昇る頃には全員疲れ果てていました。

