「でも、生きてるね?」
「は…?」
「魔女狩りに行った人間は、誰一人死者が出てない。僕はそこに彼女の強い意思を感じるよ。」
「し、しかしっ…!」
反論をしようとする兵を、総司令はまだ続ける気かと言わんばかりに無言で冷たい殺気を送る。
「…何も…ございません。失礼いたしました。」
「うん。ちゃんと休んで傷を癒してね。」
コロッと態度の変わる総司令のこの性格も、いつものことらしく。
気に留める者はいない。
「…実は、魔女から総司令様への伝言を言付かりました。」
「え?」
「非常に無礼な物言いでしたので、遠回しに言うと…」
「良いから一言一句そのまま話して。」
優しい申し出をバッサリ切り捨て。
私からの伝言をありのまま知りたいと、総司令が兵の言葉を遮って願い出る。
「…はい。」
伝言した内容に、シオンもここは耳だけ傾ける。
『過去の栄光に胡座をかくだけならばその椅子を退くのが無難。この程度の采配しか出来ない愚鈍に差し出す命はない。』
「…とのことです。」
その伝言を聞いたこの場の人間は、当の本人とシオンを除いて真っ青になる。
誰に向かって言っているんだと恐れる。
しかし、本人の反応は違う。
「ぶっは!何その子!面白いっ!」
「わ、笑い事ではございません!かなり怒ってましたよ!」
「イイね、その好戦的な感じ堪んない。ますます欲しくなるじゃん。」
「総司令様!?」
大興奮の総司令と、それを抑え込もうと努めるこの場の軍事に関わる方々。
そしてシオンは呆れ果てていた。
「うん、決めた。挙兵しよう。」
そんな唐突すぎる発言に、また頭を抱える周りの皆様。
「総司令様いくら何でも魔女一人に挙兵など、許可が下りませんよ。」
「そこは任せてよ。」
基本的に挙兵…つまり軍を動かし戦をするためには王の許可が必要。
そして、この軍事に纏わる実権は既にほぼユイ姫へと渡っているのがこの国の悲劇だ。

