(二)この世界ごと愛したい





所変わり。


エゼルタ城で開催された、とある日の軍事会議にて。




「ってことでー。国境の守備はセザール側を厚めに変えるね。」


「はい!」


「シオンはしばらく王都にいてね。」


「……。」



シオンも勿論出席はしているが、心ここに在らず。



ただボーッと。


話を聞いているのか聞いていないのかは誰にも分からず。それはいつものことと皆触れもしない。




「あ、魔女狩りも続行で。」


「…総司令様、僭越ながら魔女は人間の力では太刀打ち出来ません。もう諦めた方がよろしい…かと。」


「逃げられると追いたくなるのが男の本能じゃん。」


「しかしこのままでは…。」



今となっては、熱量を持って私を追うのは総司令のみとなっていて。


兵達は力の差が明らかな相手を追うのに疲弊していた。





「総司令様、会議中失礼いたします。」


「あれ?君はこないだ魔女狩りに派遣した…え?もう追い返されちゃった?」


「…申し訳ございません。総司令様の指定の場所に現れ、剣は交えたんですが。」


「まあ仕方ないね。怪我もしてるみたいだし、しばらく休んでていいよ。」



軍事会議に馳せ参じた兵を労い、休むように伝える。


しかしこの兵は下がらない。





「あれは…本物の魔女です。恐ろしい程の力、恐怖すら感じる美しさは非常に危険です。」


「報告は聞いてるけどやっぱそんなに美人なの!?」


「言葉に、出来ない程に。だからこそ、もう手を引くべきです。あの狂気は国を脅かすものです。」



総司令は少し考えて、笑みを浮かべる。