(二)この世界ごと愛したい






「…お嬢、俺のこと好きやったんか。」


「んなわけあるか!冗談も大概にせえよ!?」



私が居なくなると、二人でまた仲良くお話。




「まずオウスケ、お前アレンデールの重役にあの口の聞き方止めろや。」


「…知らん。俺悪ないし。」


「ほんまにそれで戦でもされたら冗談で済まへんねん。」


「お嬢があんな性格になったん絶対アイツ等のせいやん。ほんで鬼人のために帰って来いって意味分からんわ。」



カイは、その類稀なる情報収集能力で。


アレンデールの実態を少しだけ知っていた。幼少期、檻の中で過ごしていたことも。その過去があるために、私の心情は尊重されないことも。





「…お嬢は…涙出るくらい良い子やな。」


「分かっとるわ。やから腹立つんやろ。まるでお嬢の気持ちなんかないみたいに言いよって。俺はまだ文句言い足りひん。」


「それがアレンデールの在り方なんやろ。悲しいことにな。」


「あんなとこ帰したらお嬢可哀想やわ。」



そして、カイはまた知っている。


そんな私が、誰よりもあの場所に帰りたいことを。




「…そこを決めるんはお嬢や。お前、それだけは履き違えるなよ。」


「お嬢も帰らへん言うてたやん。」


「今はな。」


「いずれは帰るん?」



おーちゃんの気持ちも知っているカイは、困ったように溜め息を吐く。


昔自分が味わった苦悩を、おーちゃんも味わうことになる事実に自嘲も含んで力無く笑う。




「…鬼人に会えば、たぶん全部分かる。」


「鬼人?」


「お嬢が一番求めてるものも、願っとることも。全部分かる。」


「…ほな会いに行くわ。」


「アホ、今は戦場や。」



おーちゃんは不貞腐れるだけ。




「そんなに、凄い兄貴なんかな。」


「兄とか妹とか、あの二人には関係ないんやと思うで。」


「まさかほんまに近親で…?」


「そんなんともちゃう気がするけど。」



結局今は分からないまま。


おーちゃんは本格的にハルに会ってみたいと言う感情が増した。




「お嬢が今回始める戦、どう考えてもやっぱ俺が行くことになりそうやで。」


「総司令が言うたん?」


「一万って規模的に、白狼に貸した時の件も踏まえたらまず俺やろ。」


「一万か…。」