「…お嬢、俺のこと好きやったんか。」
「んなわけあるか!冗談も大概にせえよ!?」
私が居なくなると、二人でまた仲良くお話。
「まずオウスケ、お前アレンデールの重役にあの口の聞き方止めろや。」
「…知らん。俺悪ないし。」
「ほんまにそれで戦でもされたら冗談で済まへんねん。」
「お嬢があんな性格になったん絶対アイツ等のせいやん。ほんで鬼人のために帰って来いって意味分からんわ。」
カイは、その類稀なる情報収集能力で。
アレンデールの実態を少しだけ知っていた。幼少期、檻の中で過ごしていたことも。その過去があるために、私の心情は尊重されないことも。
「…お嬢は…涙出るくらい良い子やな。」
「分かっとるわ。やから腹立つんやろ。まるでお嬢の気持ちなんかないみたいに言いよって。俺はまだ文句言い足りひん。」
「それがアレンデールの在り方なんやろ。悲しいことにな。」
「あんなとこ帰したらお嬢可哀想やわ。」
そして、カイはまた知っている。
そんな私が、誰よりもあの場所に帰りたいことを。
「…そこを決めるんはお嬢や。お前、それだけは履き違えるなよ。」
「お嬢も帰らへん言うてたやん。」
「今はな。」
「いずれは帰るん?」
おーちゃんの気持ちも知っているカイは、困ったように溜め息を吐く。
昔自分が味わった苦悩を、おーちゃんも味わうことになる事実に自嘲も含んで力無く笑う。
「…鬼人に会えば、たぶん全部分かる。」
「鬼人?」
「お嬢が一番求めてるものも、願っとることも。全部分かる。」
「…ほな会いに行くわ。」
「アホ、今は戦場や。」
おーちゃんは不貞腐れるだけ。
「そんなに、凄い兄貴なんかな。」
「兄とか妹とか、あの二人には関係ないんやと思うで。」
「まさかほんまに近親で…?」
「そんなんともちゃう気がするけど。」
結局今は分からないまま。
おーちゃんは本格的にハルに会ってみたいと言う感情が増した。
「お嬢が今回始める戦、どう考えてもやっぱ俺が行くことになりそうやで。」
「総司令が言うたん?」
「一万って規模的に、白狼に貸した時の件も踏まえたらまず俺やろ。」
「一万か…。」

