あの鉄の檻が設置されてから、感覚が麻痺してしまった人が多いんだろう。
私にも、心があることを忘れてしまったんだろう。
「さてさて。お店のご迷惑だからね、そろそろ帰ろうね。」
「…ここには、常駐されているんですか。」
「してるって言ったらまた迎えに来るんでしょ。」
「ハル様のためならば致し方ありません。」
「じゃあしてない。」
「ではまた来ます。」
来るな来るな来るな。
もうこんな疲れる問答はごめんだ。
「…姫様。」
「今度はなに。」
「毎年恒例の、姫様の生誕祭は今年は開催出来ません。」
「そりゃあそうだよ。失墜した姫の生誕祝ってどうするの。」
一体何の報告だ。
「それにハル様とルイ様がどうしても納得が出来ないと、今年から別日に新たな催しをすることになりました。」
あの二人も捏ねると中々引き下がらないからなー。
私が言えたことでもないけどー。
「姫様のご生誕日の前日に、迎春祭をするそうです。」
「…そっか。それも楽しそうだね。」
「今ルイ様が先陣を切って準備を取り仕切ってくださってます。」
「あんまりるうを酷使しないでね。今はハルじゃなくて私のだから。」
将軍になる話もちゃんと進んでるのか怪しいな。
帰った時ハルに進捗確認せねば。
「それを伝えるとルイ様ここに飛んで来てしまいますが。」
「いちいち言わなくていいよ。ハルが城にいないんだからるうにはいてもらわなきゃ。」
「…ですね。皆姫様をお待ちしております。私も含め。」
言われなくても分かってるって。
そして、諦めたのかは微妙だが。ようやく帰る気になってくれて、店から出ようとするその人に。私は思わず謝ってしまう。
「…ハルのこと、泣かせてごめん。」
「ええ。老耄には少々胸の痛みが強すぎました。故に大変失礼いたしました。この国の方々にも、お詫びいたします。」
最後にカイとおーちゃんにもきちんと頭を下げてくれたことにホッとする。
「ハル様に、アレンデールと言う国に、そして神にも愛される大切な姫様です。どうかくれぐれも、よろしくお願い申し上げます。」

