(二)この世界ごと愛したい




あの鉄の檻が設置されてから、感覚が麻痺してしまった人が多いんだろう。


私にも、心があることを忘れてしまったんだろう。




「さてさて。お店のご迷惑だからね、そろそろ帰ろうね。」


「…ここには、常駐されているんですか。」


「してるって言ったらまた迎えに来るんでしょ。」


「ハル様のためならば致し方ありません。」


「じゃあしてない。」


「ではまた来ます。」



来るな来るな来るな。


もうこんな疲れる問答はごめんだ。




「…姫様。」


「今度はなに。」


「毎年恒例の、姫様の生誕祭は今年は開催出来ません。」


「そりゃあそうだよ。失墜した姫の生誕祝ってどうするの。」



一体何の報告だ。




「それにハル様とルイ様がどうしても納得が出来ないと、今年から別日に新たな催しをすることになりました。」



あの二人も捏ねると中々引き下がらないからなー。


私が言えたことでもないけどー。





「姫様のご生誕日の前日に、迎春祭をするそうです。」


「…そっか。それも楽しそうだね。」


「今ルイ様が先陣を切って準備を取り仕切ってくださってます。」


「あんまりるうを酷使しないでね。今はハルじゃなくて私のだから。」



将軍になる話もちゃんと進んでるのか怪しいな。


帰った時ハルに進捗確認せねば。




「それを伝えるとルイ様ここに飛んで来てしまいますが。」


「いちいち言わなくていいよ。ハルが城にいないんだからるうにはいてもらわなきゃ。」


「…ですね。皆姫様をお待ちしております。私も含め。」



言われなくても分かってるって。



そして、諦めたのかは微妙だが。ようやく帰る気になってくれて、店から出ようとするその人に。私は思わず謝ってしまう。






「…ハルのこと、泣かせてごめん。」


「ええ。老耄には少々胸の痛みが強すぎました。故に大変失礼いたしました。この国の方々にも、お詫びいたします。」



最後にカイとおーちゃんにもきちんと頭を下げてくれたことにホッとする。





「ハル様に、アレンデールと言う国に、そして神にも愛される大切な姫様です。どうかくれぐれも、よろしくお願い申し上げます。」