どうせ答えは分かっている。
この甘く美味しい機会を、棒に振る馬鹿な国はないだろう。
「帰ります。送っていただけませんか。」
「お、俺っ!?」
帰りは送ってくれと伝えただけなのに、おーちゃんがビックリする程狼狽える。
「…では結構です。」
「あー送る送る!!!」
「はい。」
「はい?」
手を差し出すと首を傾げられる。
エスコートをする概念の持ち合わせはないらしい。
「…いや、大丈夫です。」
「何やねん!?」
もうめんどくさい。
私は礼は通したので、とりあえずおーちゃんと応接室を出てお城の外を目指す。
が、おーちゃんはずっと落ち着きがない。
「…お嬢って。」
「はい?」
「…やっぱ姫やねんな。」
何を今更。
何だと思ってたんだ今まで。
「帰るならどうかお早くご案内いただけません?将軍様?」
「しょっ…気味の悪い呼び方すな!?」
「…オウスケ様?」
「その格好や!その格好があかんねん!早よ帰って脱げっ!!!」
大声で。
城のど真ん中で。
そんなことを叫ぶおーちゃんに、かなり冷ややかな視線が送られる。
「ち、ちゃう!別に邪念とちゃうぞ!?何やねんお前等!?」
…もう勝手に帰っていいだろうか。
「お、オウスケ様っ!麗しい女性に何たる凌辱をっ…!」
「オウスケ様がご乱心だ!」
「もしやそう言った間柄かっ!?」
おいおいおい。
こっちまで被害が出てきてるぞ。
「…俺のイメージ最悪やん。早よ帰ろ。」
「最初からそうしてよ。」
「何か言うたか!?」
誰にも聞こえない程の声で呟いたのに、聞こえてしまったようでおーちゃんが怒る。
「良い加減、気を鎮めてくださいませ。オウスケ様。」
「おっ、ま…〜っ!!」
周りの方への当てつけも兼ねてニッコリと笑顔を撒き散らすと、辺り一帯の顔が赤く染まるので。
より心が疲れる私はもうさっさと歩き出し、待たせてある馬車に乗り込む。
「おーちゃん疲れた。」
「…城から出れば戻るんか。」
「えーだってー。他国のお城なんて緊張するじゃんー。」
同じくおーちゃんが乗り込むとすぐに発進する馬車で、目と鼻の先のカイの酒場へ戻る。
本当に気疲れしたー。
「いつ帰って来てたん?」
「お城に着くちょっと前に。そのまま支度してすぐ来たから、カイのコーヒーまだ飲めてないのー。」
「…寒ないか?」
「冬だから寒いに決まってるけど、寒いって言ってどうなるのー。」

