(二)この世界ごと愛したい




あーあ。


おーちゃんは何故ここにいるんだろう。何もしないならどっかやってくれないかな総司令さん。




「意外と諦めが良いんですね。」


「意外…ですか?」


「戦神の名を持ち出すくらいですから、てっきり強行されるものと思っていました。」


「便利なんですよね。その名を使って、私負けたことないので。良い交渉材料になるかと思っただけです。」


「確かに。揺るぎない勝利とは喉から手が出る程に欲しいですが、ここは国の安全が第一。慎重にいかせてもらいます。」



国の安全…を考えて、慎重に。


どの国もそうだろうね。総司令なんて担うからにはそうあるべきだね。





「ですが、諦めたと言った覚えはございません。」


「はい?」


「別に私は今回戦がしたいわけではないので。あくまでも目的は兵だけです。」


「…すみません。意味が分かりません。」


「安全を第一にと仰いましたが、私はこの国に危険を強いた覚えはありません。貴方にはただ、その兵を歩かせるだけの指示をしていただきたい。」



要は進軍しているように見えればいい。


実際に戦闘にはならないだろうし。




「あ、歩かせる?だけ?」


「はい。それだけで敵は撤退するので。」


「は?」


「万が一交戦になる際も、何もしていただかなくて結構です。そこは私が対応いたします。」


「え?いや、そうなると…。我々にとってあまりにも都合が良すぎて逆に困ります。」


「勿論私は落とした城など興味もないので、お好きにどうぞ。このタイミングでしか成し得ないことですし、もし不要であればセザールにも打診してみます。どうかあまり思い悩まれず、ご検討いただけますと幸いです。」



あーもう疲れた。


喋り疲れた。言いたいことは言えたし帰ろう。




「…追って、お返事いたします。」


「一週間で答えをください。それ以上待つと…雲行きが変わりそうなので。」