「お嬢様、足元お気を付けください。」
「わざわざすみません。ありがとうございます。」
一応。
アレンデールの姫だとは伏せられているが、ここはお互いに礼を通す。
「総司令様は応接室でお待ちです。ご案内いたします。」
「…このお城…。」
中はかなり古い建物らしい。
外は修繕してるのか綺麗に見えたんだけど。お金あるんだから中も直せばいいのに。
「お嬢様?」
「いえ、失礼しました。参りましょう。」
こうして応接室へ案内してもらって。
案内役の人が応接室のドアを叩き、返事も聞かずにドアを開く。
「総司令様、面会希望のお嬢様をお連れしました。」
「ご苦労様です。」
「それではお帰りの際はまたご案内いたしますので、お声掛けくださいませ。」
案内役の方は速やかな退室。
応接室の中にいらっしゃる男性。この総司令様と、話をしなくては。
部屋の片隅で私を見て惚けているおーちゃんなんて知らん。何してるんだ一体。ここは捨て置いて良し。
「アレンデールの姫君、お会い出来て光栄です。」
この人には身バレしてるのね。
カイかおーちゃんかが話が進みやすいように伝えてくれたんだろう。
「…リン・アレンデールと申します。こちらこそ、身勝手な頼みを聞いてくださりありがとうございます。早速ですが、よろしいですか?」
「兵のことですよね。オウスケから軽くご用件は聞きました。」
そう言えばマブダチだって言ってたな。
良いのか?今そのマブダチ真っ赤になって悶えておりますけど?
「…ええ。」
「正直に申しますと、条件次第です。姫様の意図が分からない今お貸しするわけにはいきません。」
「それが妥当です。」
しかし、この場を設けられた時点で私の勝ち。
パルテノンは私に兵を差し出すことになるだろう。
「お借りしたい兵の数は約一万。狙うはエゼルタとの国境付近の城です。」
「一万で…あの城を?」
「本来であれば多大な兵力が必要でしょうが、今ならば半数以下で落とせます。」
逆に今しかない。
この国にとってはまたとない好機。それを知っているからこそ、この話を持ち掛けた。
「俄には信じられないその話を、ご提案されている姫様の真意が見えません。」
「真意と言える程のものはございません。かなり私情が入っており恐縮ですが、この城を落としてエゼルタの威信を失態させるのが私自身の本懐です。」
「威信を、失墜…?」
「この国にとっても、悪い話にならないよう取り計います。戦神の名にかけて、揺るぎない勝利を差し上げることしか私には出来ませんが。」
戦神の名にかけてなんて、人生後にも先にも言う日が来るとは思わなかったなー。
そしておーちゃん大人しいなー。助かるけど。
「…お引き受け致し兼ねます。」
「そうですか。」

