この日以降、私は目まぐるしく各国を飛び回る。
雨だろうがお構いなしに、ただこの胸の痛みに目を向けないように。
「アレンデールの魔女か。」
「もうただの魔女でいいよ。国は捨てたので。」
そんな機嫌が悪いところに、エゼルタの追手が現れる。
「このまま同行しろ。」
「もう何度も何度もね。そう言って来る人を追い返して来たんだけど、そろそろ嫌になって来たから。総司令さんに伝言託すね。」
「連れ帰った折に自分で伝えろ。」
それが出来ないだろうから言ってるんだ。
装具の重さにも何とか慣れて来たが、まだ長時間動くことは出来ない。これがまた情けなく思える。
しかし、ここはさっさと剣に炎を纏い一瞬で追手を斬り倒す。
「伝言よろしくね。」
気が立っているもので。
荒々しい伝言にはなってしまったが、大したことではないだろう。
そして、また飛び回り。
夜になればカイの拠点でひっそりと眠って、朝が来ればまた飛んで。
そんなことを繰り返している中、クロに乗せてカイには売り捌くための情報を共有している。
外から連携も取りつつ、お店にも顔を出す。
「…ただ、いまー。」
「お嬢おかえり、て。ずぶ濡れやん。」
「寒い。」
「当たり前や!ちょい待ち!」
私が帰るとすぐに大きいタオルを持って、私に被せて冷えないようにカイが気を使ってくれる。
今日は例のパルテノン総司令さんとお会い出来る日。なので帰って来た。
「コーヒー飲むか?先風呂か?」
「高速でシャワー浴びてからコーヒー飲むっ!」
「急がんでも大丈夫やからちゃんと身体温めや。」
「はーいっ!」
階段を登りながら返事をする私に、苦笑いを浮かべながらコーヒーを淹れ始めてくれるカイ。
そして上にはワカさんがいて。私がお城に行くための支度を手伝ってくれるらしい。相変わらず大人の配慮には頭が上がらない。

