(二)この世界ごと愛したい






この日以降、私は目まぐるしく各国を飛び回る。


雨だろうがお構いなしに、ただこの胸の痛みに目を向けないように。





「アレンデールの魔女か。」


「もうただの魔女でいいよ。国は捨てたので。」



そんな機嫌が悪いところに、エゼルタの追手が現れる。




「このまま同行しろ。」


「もう何度も何度もね。そう言って来る人を追い返して来たんだけど、そろそろ嫌になって来たから。総司令さんに伝言託すね。」


「連れ帰った折に自分で伝えろ。」



それが出来ないだろうから言ってるんだ。


装具の重さにも何とか慣れて来たが、まだ長時間動くことは出来ない。これがまた情けなく思える。



しかし、ここはさっさと剣に炎を纏い一瞬で追手を斬り倒す。




「伝言よろしくね。」



気が立っているもので。


荒々しい伝言にはなってしまったが、大したことではないだろう。



そして、また飛び回り。


夜になればカイの拠点でひっそりと眠って、朝が来ればまた飛んで。



そんなことを繰り返している中、クロに乗せてカイには売り捌くための情報を共有している。


外から連携も取りつつ、お店にも顔を出す。





「…ただ、いまー。」


「お嬢おかえり、て。ずぶ濡れやん。」


「寒い。」


「当たり前や!ちょい待ち!」



私が帰るとすぐに大きいタオルを持って、私に被せて冷えないようにカイが気を使ってくれる。


今日は例のパルテノン総司令さんとお会い出来る日。なので帰って来た。




「コーヒー飲むか?先風呂か?」


「高速でシャワー浴びてからコーヒー飲むっ!」


「急がんでも大丈夫やからちゃんと身体温めや。」


「はーいっ!」



階段を登りながら返事をする私に、苦笑いを浮かべながらコーヒーを淹れ始めてくれるカイ。


そして上にはワカさんがいて。私がお城に行くための支度を手伝ってくれるらしい。相変わらず大人の配慮には頭が上がらない。