(二)この世界ごと愛したい




私を褒めて褒めて止まないカイを、とりあえず止めて。


これからの働き方の話をした。



私の情報について、発布する頻度を減らして欲しいこと。出現場所については今後私が主導で決めたいこと。それは鷹で連絡すること。


そしてしばらく飛び回り活発に動くため、ここへは毎回戻れないこと。




「まあ、俺はええけど。オウスケに何て言おかな。」


「上手く言っといてー。」



また、お休みのこともお伝えしました。


一応ハルの大将戦が終わる頃に、裏山で待つと伝えたので。たぶんしばらくは離しては貰えないだろうから。




「戦の序盤こそヒヤヒヤしたけど、気付けばもう大将同士戦ってんねんもんな。」



今も決して余裕ではないんだと思う。


もう明日か明後日には、ハルに似合わない雨が降るのがその証拠だ。




「敵がまだ何か仕掛けるんだと思う。この一週間乗り切れば風向きが変わるよ。」


「…鬼人の戦況報告どうする?見る?」


「見る…あ、やっぱ見ない。…嘘見る。」


「お嬢はほんま鬼人好きやな。」



…それはもう。



これだけヤキモキするくらいに好き。


気を抜くと今すぐに戦場に行ってしまいたくなるくらいに好き。


もう会いたくて泣きたくなるほどに好き。





「外の世界で、信じて待つことがこんなに苦しいなんて思わなかったの。」


「…そうやな。」


「私がハルに会えなくて苦しいのは、きっとハルが同じだけ同じ想いをしてるからなの。」




そう思って頑張るしかないの。


ハルは最前線で頑張ってるの。私の命の火を守るために。いつだって必ず帰って来る。




…分かってるのに。



人の心とは、どうしてこうも融通が効かないんだろう。




この場に大人のカイしかいないのを良いことに、言いたいことだけ吐き出して。


溢れる涙も止められないまま眠りについた。





「…いつかも聞いたような弱音やな。」



数十年前の記憶を辿り、カイは私を抱えて上の部屋に優しく寝かせてくれた。