そうこうしている間にお風呂を済ませたトキが帰って来て。
また地図を見ている私に驚きつつ、声を掛ける。今度はちゃんと耳を傾ける。
「本と地図どっちにする?」
「…今日は本っ!」
「じゃあ約束の三冊…って、ちゃんと待ってたんだね?」
「重要文献なのは理解してますー。だから本当に無理ないのだけで大丈夫!」
トキはまたいい子だねと。
そう言って私の頭を撫でる。
「髪の毛ちゃんと乾かせたらもっといい子だったけどね。」
「あ…。すみません。」
るうがいないって、こんな時も不便。
「はい、これどうぞ。」
「大事に読みます!!!」
「大事にしなくていいから早く読んで早く寝ようね。」
「はい!!!」
トキから三冊本を受け取り、早速開く。
見たことないほど、精密な軍略に関する本。これもその道の人間でないとまずお目にかかれない本だろう。
…わっくわくです。
「……。」
「…読みながら話せる?」
「んー、うん。大丈夫だよー?」
本当は集中したいけども。
でも問題ない。
「さっき、俺に運命に逆らわないのか聞こうとしたよね?」
「え…。あ、一瞬だけね。」
「リンは結婚しても、ちゃんと抗って無事に自由を勝ち取ったわけだけど、俺は抗ってもたぶんいいことないんだ。」
「うーん。私の場合相手がレンだったからね。運が良かったけど。結婚と自由はあんまり関係なくて。」
レンとの政略結婚は、パパの復讐のため。
自由は、火龍の力のため。
私からすれば全く違う事象で、それぞれの解決方法。たまたま同じタイミングでどっちも好転しただけ。
「私はひ弱なので。」
「え?」
「だからこそ絶対に譲れないものだけは貫き通す気で動くの。逆にそれ以外は無理なら諦める。」
「譲れないもの…か。」
そう考えると案外簡単だったりする。
「セザールに来たのもパパの復讐のため。これが根源。ここだけを成し得ればいい。自由はこの力で国を敵国から守るため。アレンデールを守れればいい。」
「……。」
「トキの譲れないものって何?」
「俺は…。」

