(二)この世界ごと愛したい




そうこうしている間にお風呂を済ませたトキが帰って来て。


また地図を見ている私に驚きつつ、声を掛ける。今度はちゃんと耳を傾ける。




「本と地図どっちにする?」


「…今日は本っ!」


「じゃあ約束の三冊…って、ちゃんと待ってたんだね?」


「重要文献なのは理解してますー。だから本当に無理ないのだけで大丈夫!」




トキはまたいい子だねと。


そう言って私の頭を撫でる。




「髪の毛ちゃんと乾かせたらもっといい子だったけどね。」


「あ…。すみません。」



るうがいないって、こんな時も不便。




「はい、これどうぞ。」


「大事に読みます!!!」


「大事にしなくていいから早く読んで早く寝ようね。」


「はい!!!」




トキから三冊本を受け取り、早速開く。


見たことないほど、精密な軍略に関する本。これもその道の人間でないとまずお目にかかれない本だろう。



…わっくわくです。





「……。」


「…読みながら話せる?」


「んー、うん。大丈夫だよー?」




本当は集中したいけども。


でも問題ない。




「さっき、俺に運命に逆らわないのか聞こうとしたよね?」


「え…。あ、一瞬だけね。」


「リンは結婚しても、ちゃんと抗って無事に自由を勝ち取ったわけだけど、俺は抗ってもたぶんいいことないんだ。」


「うーん。私の場合相手がレンだったからね。運が良かったけど。結婚と自由はあんまり関係なくて。」




レンとの政略結婚は、パパの復讐のため。


自由は、火龍の力のため。



私からすれば全く違う事象で、それぞれの解決方法。たまたま同じタイミングでどっちも好転しただけ。





「私はひ弱なので。」


「え?」


「だからこそ絶対に譲れないものだけは貫き通す気で動くの。逆にそれ以外は無理なら諦める。」


「譲れないもの…か。」




そう考えると案外簡単だったりする。





「セザールに来たのもパパの復讐のため。これが根源。ここだけを成し得ればいい。自由はこの力で国を敵国から守るため。アレンデールを守れればいい。」


「……。」


「トキの譲れないものって何?」


「俺は…。」