(二)この世界ごと愛したい




「…服のまま?」


「せや。」


「…しょうもな。」


「やから期待すな言うたやろ。」



ガッカリと肩を落とすカイ。




「…ほんで、じゃあ何でお前はすぐ戻らんかってん。」


「あのお嬢装具付けて動かれへんのが嫌やからって自分の腕斬るわ、夜中に勝手にオーバーワークするわで目離されへんねん。」


「お前怪我させたんかい。」


「普通斬ると思うか!?」



あれからは斬ってませんよ。


夜中に自主練することも出来ないくらい日中おーちゃんが一緒に稽古してくれたので、夜は爆睡でした。




「ほな稽古ばっかして色気ない二人が、帰って来てみれば何でこんなむず痒いことになってんねん。」


「っ!」


「お嬢の態度が変わっとる。あの子は自分で分かってへんやろうけど、確実に意識はしとる。告白でもしたんか。」


「…まあ、似たようなことは…言うた。」



観念して白状したおーちゃんを、寧ろ今頃か…と呆れ気味のカイ。


カイにはその気持ちは筒抜けだった様子。




「そんな雰囲気まで持って行けただけでも及第点か。亀の歩みやけどな。」


「だっ、誰が亀やねん!?」


「お前やお前。そんなのんびりしてたら他の人間に掻っ攫われんの分からんのか。」


「…別にええよ。お嬢が決めたこと俺に口出す権利ないし。それに、この先お嬢の守りは…たぶん多いに越したことない。」



この先のことなんて、おーちゃんには分からないはずだが。直感でそう感じたのか。


守りは多い方が良いと、あの日自分の腕を躊躇なく斬った私を見て思っていた。




「分かった上でお前が決めたならええけど。」


「…なあ、カイ。」


「何や。」




「…俺、生まれて初めて可愛ないって言われた。」



ちゃっかり。


お店でよーちゃんと私の会話を聞いていたらしい。