「…服のまま?」
「せや。」
「…しょうもな。」
「やから期待すな言うたやろ。」
ガッカリと肩を落とすカイ。
「…ほんで、じゃあ何でお前はすぐ戻らんかってん。」
「あのお嬢装具付けて動かれへんのが嫌やからって自分の腕斬るわ、夜中に勝手にオーバーワークするわで目離されへんねん。」
「お前怪我させたんかい。」
「普通斬ると思うか!?」
あれからは斬ってませんよ。
夜中に自主練することも出来ないくらい日中おーちゃんが一緒に稽古してくれたので、夜は爆睡でした。
「ほな稽古ばっかして色気ない二人が、帰って来てみれば何でこんなむず痒いことになってんねん。」
「っ!」
「お嬢の態度が変わっとる。あの子は自分で分かってへんやろうけど、確実に意識はしとる。告白でもしたんか。」
「…まあ、似たようなことは…言うた。」
観念して白状したおーちゃんを、寧ろ今頃か…と呆れ気味のカイ。
カイにはその気持ちは筒抜けだった様子。
「そんな雰囲気まで持って行けただけでも及第点か。亀の歩みやけどな。」
「だっ、誰が亀やねん!?」
「お前やお前。そんなのんびりしてたら他の人間に掻っ攫われんの分からんのか。」
「…別にええよ。お嬢が決めたこと俺に口出す権利ないし。それに、この先お嬢の守りは…たぶん多いに越したことない。」
この先のことなんて、おーちゃんには分からないはずだが。直感でそう感じたのか。
守りは多い方が良いと、あの日自分の腕を躊躇なく斬った私を見て思っていた。
「分かった上でお前が決めたならええけど。」
「…なあ、カイ。」
「何や。」
「…俺、生まれて初めて可愛ないって言われた。」
ちゃっかり。
お店でよーちゃんと私の会話を聞いていたらしい。

