こんな良い人に不躾なことする人はいないだろう。
だからみんなおーちゃんをヒーローの様に扱ってるわけだし。
「昔っから動物園みたいな兄弟の中で、その動物達を一人で面倒見ててなあ。」
「ど、動物園…?」
「ほんまは俺がやらなあかんかってんけど、俺は柄やないし。面倒見ええんはそんなんが染み付いてるんやろうけど。」
「兄弟多いって言ってたねー。」
よーちゃんが長男で。おーちゃんが次男。
よーちゃんは確かに自由奔放にのらりくらりしてそう。
「やからか、中々本音も言わへんし素直でもないし。損な性格になってしもてんけど。」
「ふーん。」
「お嬢さんには、珍しく素直になれるみたいやから。あとカイにも。」
んー?素直だったか?
「割と嫌なことは嫌だって言う人だし、よーちゃんが思ってる程嫌じゃなかったんじゃない?」
「そうやとええなー。」
「私もここに来て良く分かったけどさ。おーちゃんってたぶん思ってるより大人なんだよ。色んな意味であんまり可愛くない。」
「ハニーを可愛くないとか言う人初めて見たわ。流石世界一の美少女。」
そう言う意味で言ったんじゃない。
マウント取ったみたいに言うな。
私が不満気なのを見て、よーちゃんが楽しそうに笑って改めて頭を下げた。
「…オウスケのこと、よろしゅうな。」
ハニーではなく、名前を呼んで。
こんな訳の分からない小娘に、よろしくと頭を下げたその姿は良き兄の姿そのもの。

