「もういっか。」
もうずぶ濡れだし気にしたら負けだ。
吹っ切って朝纏めた髪を解き、着衣入浴でのんびりすることを決めた。
「おーちゃんも入るー?あったかいよー?」
「……。」
「ほかほかー。」
寒そうだし、着衣入浴なら良いのではないかと思い誘ってみた。
が。
私の意図が伝わらなかったのか、服を大人しく脱ぎ始めたおーちゃんに私が焦る。
「うん!?脱ぐの!?」
「何か色々…腹立ってきてん。」
「わ、私お邪魔だね!?交代しよう!?」
「どうせ動かれへんやろ。」
これがどうして仰る通り!!!
腕は上がらない足も動かない!!!
上半身脱ぎ終えたおーちゃんが視界に入ったので、逃げ場もない私は咄嗟にせめてと目をぎゅっと瞑る。こう言うのはデリカシーだ。見ちゃダメだ。
そしておーちゃんが同じ浴槽に入ったのが分かる。分かったところで目は開けられない。
「お嬢。」
「…なに。」
「温いな。」
「…そ、だね。」
知らん。
温度は最早わからん。
「嫌やったら手、握り返して。」
「ンっ…。」
握られた手と反対の手は私の後頭部に回されて。
そのまま濡れたキスが落ちてくる。
握り返せと言われても、情けないことに今握ってるのか握れてないかも正直分からない。
ただ頭の中に強く残っているのは、目は開けちゃいけないと言うこと。
「お、ちゃっ…。」
啄むようなキスは、徐々に熱が増す。
やっぱりおーちゃんは可愛くないかもしれない。だってもう、こんなに抗えない。
「ゃっ、ま…っ…。」
待ってほしいと。
声を掛けたいのにお構いなしのこの人は、やはりどこか優しくて。後頭部にあった手でそのまま抱きしめてくれる。
その間もキスは止まない。

