また真っ直ぐ私を見る。


出会った時から、曖昧な距離で過ごしてきた。近いような遠いような。


今でも遠近感覚が分からなくなる時がある。



レンが私を想っているその気持ちに、嘘はないと勿論分かっている。


疑ってるわけじゃない。



だけど、この瞳に見つめられて。





「信じて、リン。」



そう言われたら。


信じることが苦手な私なはずか、心の奥底で…信じたいと思えてしまうのが不思議だ。




「…は、い。」


「リンはいつも可愛いね。」



レンは分かっているんだろうか。


私が人を信じることの難易度の高さを。




「もう早く行こっ…!」


「朝ご飯食べてからにしようか。」



本来ならオッケーなんかしない。


しないというか、出来ない。




「えー、お腹空いてないー。」


「食べないと風邪も治らないからね。」



なのにどうして。


私はこうも簡単にレンを信じようと思えたんだろう。




「…はいー。」


「じゃあその後薬飲んで出発しようか。」



もし、答えがあるとすれば。




「流石ゴッドハンドだねー。」


「え、何それ?」


「神の手を持ってる医術師だって聞いたよー。」


「へえ、知らなかった。」


「レンは本当にすごいね。」


「…神の手は…過言な気はするけど。」



その答えはきっと。


私を大きく動かす答えな気がする。



だから今は少し、知るのが怖い。




「そう?名誉でいいじゃん?」


「俺にとってはリンが主治医だって言ってくれることが一番の名誉だよ。」


「っそれこそ過言だから!」



怖いけど。


私はこの紺碧色の鳥籠の中は、不思議と居心地がいいと思えてしまって。




「リンには伝えても伝えても足りないから、何度でも言うよ。」


「言わなくていいっ!」


「大好きだよ、リン。」


「だっ〜…から…っ!!!」



結局私は拒めない。


この鳥籠に吸い寄せられる。



ハル以外で初めて。私を捕えるだけでなく、その場に置き留めることが出来る人かもしれない。