離れようと踠くほど。
抗おうとすればするほど。
強く惹かれるのは何故だろう。
「じゃあ、早く出てってね。」
「レン…様…。」
「こんな傷まで付けといて、許せるほど器量の大きい王子じゃなくてごめんね。」
いやいや。
寧ろ器量が大きいからここまで許されたんだろうと思いますが。
同じ王子と言う立場のハルなら、下手したら斬ってる可能性もある。
アレンデールにはそんな命知らずがいないだけで。
「…遅くなってごめんね。」
魂が抜けたように力無く女官が退室した後に、レンが私に謝った。
「たぶん朝ご飯出来たよってレンに声掛けてくれようとしたんだよ。私が原因なら、可哀想だしこのまま置いてあげてもいいんじゃない?」
「ううん。もう他の女官の子達も辞めさせてきたから丁度良かったんだ。」
「えっ?」
他も辞めさせたの!?
「リンより大切なもの、俺にはないから。傷付けるなんて以ての外だよ。」
「さ、さっきから…それやめてって言ってるのに。」
「俺の側にいてほしくないんでしょ?」
「それはっ…!」
なんか語弊を生んでる?
私が我が儘言ったみたいになってる?
「どんな事情でも、リンがそう言うなら側に置きたい理由がないからね。」
「…無責任なこと言ったかなって反省してる。レンが少し怖い。」
夢中にさせて。
虜にして。
この城という鳥籠で飼い慣らしたのに、レンの采配一つで居場所がなくなる。

