「この裏口から出なさい!早く!!」
まだ近くにいたのか、先程の女性達が私に道を教えてくれる。
「あ、りがと。」
反射でお礼を伝えると怪訝そうにされた。
言われた通り裏口へ向かうと、更に後ろから私の耳に声が届く。
「…何してるの?」
私がモタモタしたせいで、どうやらレンが帰ってきてしまったらしい。
レンが後ろにいるのはわかっているが、振り返る元気はない。
「れ、レン様っ!」
「この女は…他国の間者かもしれませんっ!」
「そうです!レン様に危険がないよう追い払っていたところです!」
女性達がそれぞれレンに苦しい言い訳を始める。
「追い払う?」
「とにかくレン様はお疲れでしょうし、ここは私達にお任せください!」
一人の女性が私の腕を引っ張りそのまま外へ出そうとした。
しかし、その力にさえついて行けない私の身体が大きく揺れる。
「…安静にって言ったのに。何したらこれだけ悪化するの?」
「れ…、ん。」
足の踏ん張りが効かず倒れそうになった私を、再びレンが支えてくれる。
「とにかく今は休まなきゃダメ。」
「ごめ…ん。」
「うん、大丈夫。すぐ治してあげる。」
流石はゴッドハンド。
すぐに治すと言い切ったレンはその場で私を抱えて歩き出す。
それをどうにか引き止めようと女性達も負けない。
「お待ちください!レン様!」
「まだ間者の疑いが晴れておりません!」
優しいレンは、彼女達の必死の叫びを蔑ろにはしない。
だから立ち止まって振り返る。
「仮に間者でも構わないよ。俺は騙されたって避けられたって、この子が好きだから。」
ああ。
もう意味が分からないくらい身体は熱いというのに。
更なる熱が加わる。

