(二)この世界ごと愛したい




私はシオンのことを少しずつ解読している。


しかしそれはシオンも同じ。



一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、互いの長所も短所も…攻め所も露見する。





「〜っや、やればいいんでしょ!?」


「はい。」



大丈夫だ。


膝枕同様、絶賛安売り中だ。



こんなの減るもんじゃないし。アキトの城では大盤振る舞いだった。




…なのに。



ここは外。しかもまだ朝。そして目の前のシオンに熱い視線を送られて怖気付く。




「…まだですか。」


「まっ、待って。精神統一してる。」



大丈夫だ!私!


私だって子供じゃない!もう経験者だ!初心者ではない!…はずだ。



恐る恐る、外套でほとんど隠れているシオンに手を伸ばしその顔に触れる。




「〜〜っやっぱ無理ッ…!」


「…無理じゃない。(何コレ。可愛いの度合いどうなってんの。)」



逃げるのを許さないシオンが、私の腕を離してくれない。


意を決して…と言うか早くこの場から逃げ去りたくて、私は心を無にして勢い任せにキスをした。




…ほっぺに。




「は?」


「…やめて見ないで。」


「…震えてる。」


「いっ、言わないで離して。」



そっとシオンが腕を離してくれた。


恥ずかしさに震える私の謝罪は受け入れられたらしい。




「…良いもの見れたしいいか。」


「っ邪狼…。」


「本当に食い荒らしたくて仕方ないんで、今のうちにどうぞ行ってください。」


「〜っ!?!?」



食い荒らすって何!怖いよっ!


もう居た堪れない感情が溢れ、私は炎を纏う。





「し、シオンのばかーっ!!!」



負け犬の遠吠えの如く。


情けなく叫びながら私は大空へ舞い上がるのでした。