お互い眠いなりに出掛ける準備に取り掛かり、宿主さんに私は挨拶も済ませる。
レンに会えたらレンにも声を掛けようと思ったけど、部屋の場所も分からないし。宿主さんに伝言だけ頼んで私はシオンと宿を出た。
「じゃあ私行ってくるねー。」
「体調は?」
「若干怠いけどこれくらいなら問題ないよー。」
「…アキトとトキがいるし心配ないとは思いますけど、あんまり無茶しないでください。」
確かに。
最悪また倒れてもアキトが死に物狂いで助けてくれると思う。
「数分で片付くから大丈夫だよー。」
「…怖。」
「トキに怪我させたりしないから安心してね!」
「そんな心配してません。」
これも、トキの力量の問題ではなく。私がそんなことをするわけがないのを見越した言葉。
言葉足らず。不器用な人だ。
「…またね、シオン。」
「ちょっと待って。」
「ん?」
飛び立とうとした私に待てと言うシオン。
まだ用があるのかと不思議に思い首を傾げると、私の腕をグイッと引き寄せる。
「詫び、貰って良いですか?」
「…何の?」
「予定狂わされたんで。」
天気予報のために来たのに。
私が派手にやって来たので出来ず。その後出来たかもしれないのに私が軍の相手をしたことで出来ず。さらにその後も少し出来たかもしれないのに私が体調崩して出来ず。
…うん。確かに私が悪いな。
「ごめんね?」
「謝罪はいいです。」
「言ってること滅茶苦茶だよ?」
「キスが欲しい。貴女から。」
その言葉を聞いて一瞬思考が止まる。
止まって動き出すと、顔に熱が走るのが分かる。
「な、何言ってんのっ!?」
「誠心誠意、身体で謝ってください。」
「変な言い方しないで!普通に謝ったじゃん!それにシオン誠意なんて言葉似合わないよ!」
「…俺には面倒事押し付けるだけ押し付けて、詫びもなしか。」
まるで私が無礼だと言わんばかりの言い草だ。

