(二)この世界ごと愛したい




視界が暗いと、あれだけ寝たにも関わらず少しだけ睡魔が顔を出す。


明日も火龍の力を使う。早く寝るに越したことはない。




「午前中の内には出発するねー。」


「じゃあ俺もそうします。寝てたら起こしてください。」


「私も同じこと考えてた。二人して午後まで寝ちゃったらどうしよっか。」


「…俺が起きれるようにします。」



シオンも寝起き良くないって聞いたけど、起きれる解決方法があるなら今度教えてもらおう。




「シオンがお兄ちゃんっぽいー。」


「貴女のはごめんです。」


「私もー。」


「…ムカつく。」



実際にシオンがお兄ちゃんになるのは嫌だ。


性格悪いし意地悪だから嫌だ。すぐに何でも斬ろうとするから嫌だ。




「でもトキはシオンがいいんだよ。」


「誰でも一緒です。」


「トキは弓が上手なんだよー。お祭り行った時に見たんだけど遠い的の真ん中に当てたの。凄かったー。シオンにも見せたかったー。」


「…昔練習してたの見てたんで知ってます。」



それはそうか。


きっと小さい頃から練習しないとあれ程の腕前にはならないよね。




「今度教えてもらうのー。」


「……。」


「あ、それにトキは…っうん?」



シオンが私の顔を強引に上げる。


視線が交わる。




「トキのことばっかりですね。」


「ダメ?他に共通の話題見つからなくて?」


「話題が必要なんですか。」


「…もう寝れそうなんだけど、眠るまで何かお話したいなって。」