「し、シオン…離れよ。」
「何で俺が。」
「私は真っ二つにはなれないから!」
グイッとシオンを押し退け。
レンが運んでくれた食事に手を伸ばす。言っておくが食欲はない。ないけどこれ以上レンにチクチク言われるのは嫌だ。
「熱があると食べないリンがちゃんと食べてる。成長したね。」
「私子供じゃないよー。」
とは言いつつ。
こんな状況じゃなきゃ確かに食べてはいないだろうなと、思うのも事実。
「あ、レン。エゼルタ王の様子どうだった?」
突拍子もなく聞いた私に、レンは勿論。シオンも驚きを隠せない。
「あの馬車城の方から来たし。レンがわざわざ他国に出向くってことはそうなのかなって。違った?」
「…違わないけど。」
「治りそう?」
「…うーん。スーザンに極秘にって頼まれたんだけど。」
国同士。王同士の案件。
名目は王と王子の会合にでもしたんだろうか。実際は病気の診察だと考察した。
「じゃあ意識がちゃんとあるかだけ教えてっ!」
「…ある。ただこれ将軍の前でリンに話して俺大丈夫なのかな。」
「大丈夫!シオンこう見えても本当は優しいから!」
「うん、それは何となく分かるよ。(優しくするのはリン限定に見えるけど。)」
エゼルタ王の意識は…ある。
レンの様子からしてそんなに重篤とも思えない。カイから心労が大きいと聞いた。
…私の道に障害はなさそうだ。
「婚儀の時もエゼルタ王のこと気にしてたね?知り合いなの?」
「会ったことないよ。会う機会もなかったし。」
「そうなんだ。」
会ったことはないけど、お互いに存在だけは認知している。
向こうはどうだか知らないけど、私はずっと会いたいと思っていた。
「…ん?」
レンが私の左腕を取る。
「時間が経ってるから綺麗に…とまでは無理だけど。出来ることはやるね。」
「…ご丁寧にどうも?」
「主治医だからね。全然治療させてくれないけど。」
「何かすみません。」
もう謝っても謝っても許してもらえない気がするのは私だけかな。
明日が少し怖くなって来た。
腕の処置も済んだのを確認し、かなり言いにくいが私はレンに声を掛ける。
「色々ありがと。レンはお部屋別だよね。また明日会えるから今日は…うん。またね。」
「……。」
悪いと思っている。
ここまで良くしてもらって、部屋を追い出すようなこと私も胸が痛むので言いたくない。
何とも言えない顔でレンが私を見ているから、謎に罪悪感まで感じてしまう。
「…そうだね。俺はお暇するよ。」
「…うん。」
「リンの心は自由で、誰にも縛れるものじゃない。だからそんな顔しないで?」
そんなに暗い顔をしてしまっただろうか。
どこまでも人のことを考えてしまうお人好しなレンに、私は若干呆れる。
「明日もまた嫌になるくらい伝えるつもりだけど、偶然でも今日会えただけでもう充分嬉しいよ。ありがとう、リン。」
「お礼なんて言わないでよ…。」

