だけどシオンが見せる笑顔は、やっぱりトキを思わせる。
トキを思わせるということは可愛いんですよ。
それなのに、言ってることは怖すぎる。
「…性悪兄弟。」
「俺の前でセザールのアレとあんまり戯れないでください。斬りたくなるんで。」
「戯れてないし、他国の王子をアレとか言わない。親御さんはどんな人なの。」
「…さあ?」
シオンがぽんっと私の頭に手を乗せる。
「うん?」
「明日城に戻ります。かなり面倒になってる気がするんで嫌ですけど。」
「ごめん!でも戦は準備が大切!来たる夜明けの日に勝利の美酒を一緒に飲もうっ!」
「…それは、悪くないな。」
戦で準備が大切だと言うことは、他の誰でもないシオンから学んできたこと。
シオンの戦はいつも用意周到。理想的で無駄のない策。
「ってことで、レンに戦の話バレないようにするの手伝ってねー。」
「…はぁ。」
シオンを丸め込むのに成功した。
そしてしばらくして、レンが食事を持って戻って来てくれた。
「リンはトキのお兄さんと随分仲良いんだね。」
「へ?」
戻ってくるや否やそんなことを言われた。
なので何故そう思ったのか考えてみて、自分の置かれた状況を俯瞰で捉える。
さっきまで抱き合ってしまったもので、その距離は近い。近いと言うか私の腰にシオンの腕はさりげなく回されたまま。
「っ!」
「君は本当に魔性だね。」
さっきから棘のある言葉を言う時だけ私を君と呼ぶ。
気付いてはいるものの、この二人との三角関係の均衡を保つのは如何せん難易度が高い。

