「自意識過剰じゃなければ、私のことをこの街の人よりも“姫”だって認識してそうなのはシオンだよね。」


「……。」


「この国の姫にはどう頑張ってもなれないけど。シオンにはきっと守るべきものが必要だと思うから、私がなってあげる。」



エゼルタの姫ではなく。


アレンデールの姫でもない。




「シオンが守りたいと思えるような、お姫様になるね。」


「…不要です。」


「やっぱ捻くれてる。」






「出会ったあの時から、俺はあんた以外の姫を知らない。」



それはもしかすると、実際のアレンデールの人々よりも強く。


ハルも含めた家族やるうよりも重く。



誰よりも私を“姫”として認識していると。





「…それにしては無礼だったけどね。」


「そもそも礼儀なんて知ろうと思ったことなかったんで。」


「別にいいんだけど。」


「じゃあ、あんたもそろそろ覚悟決めて。」



覚悟とは???


私を抱き締めるシオンの腕に更に力が込められる。






「俺に守られる覚悟。」




シオンに、守られる。


正直言うと私にはハルがいるので、必要ではない気がする。





『各国が立ち上がり貴女を狙って攻め入ったとしても、俺なら貴女を守れる自信がある。』


『貴女を守れるのはハルじゃない。』



再会してからずっと、シオンは私に訴えていた。


シオンの思考は、私ではとてもまだ読み取れそうにないけど。





「…じゃあもし本当に守ってもらわなきゃいけないような状況になったら、守ってもらおうかな?」


「ハルじゃなくて俺を呼んでください。」


「状況による。」


「…今はそれでいいです。」



シオンは抱き締めていた腕を解く。


身体を離し、向き合って、私の目を見て、楽しそうに笑う。






「嫌でも俺に助けてって言わせる策でも練るか。」



ゾクリと。


身体に悪寒が走ったのは、きっと熱のせい…だと思いたい。