頭を働かせて、私はどうにか戦のことがバレないように繕う。
「…シオンとお出掛け。」
「安静にって言ってるのに。」
「シオン強いし頭も良いし、それにトキのお兄さんだから大丈夫だよ。」
困ったような顔のレンと、私の嘘に巻き込まれて納得いかなさそうなシオン。
私は布団に潜っているので各々の表情は知るところではない。
シオンが口数少なくて助かる。
「じゃあ待ってるね。」
「…うん。」
「リンが食べられそうな物もらってくる。」
そう言ってまた部屋を出たレン。
するとシオンがすぐに動いた。熱があるのもお構いなしで私を布団から出した。
「…あつ。」
「うー。寒い。」
私の手に触れたシオンはその体温にまた驚く。
「すみません。」
「大丈夫…だけど。」
ちょっと私は困っている。
レンとシオン。恐れ多くも板挟み状態に近い私。
「シオンまた寂しそう。」
「ふざけんな。」
「…口悪い。寒い。」
このまま二人を相手にし続けるのは私も辛い。
どっちにも気を遣わなきゃいけないこの状況では、一人でいる方が休める。
思い悩む私をシオンがふわっと抱きしめる。
「シオン?」
「…貴女の結婚相手。本来なら斬ってる。」
「そうやって何でもすぐ斬ろうとするのやめようね。私はいつでも優しいシオンがいい。」
私を抱きしめるシオンの背中に手を回した。
「私のいないところで、この街みたいなことが起こったら次はシオンが助けてあげて。」
「……。」
「国のためじゃなくていい。自分のためにもならないと思う。でも今は、私のために忠義を示して。」
「…忠義の意味知ってますか。貴女はこの国の姫じゃない。」
勿論知っていますよ。
本来シオンが忠誠を誓うのはエゼルタの王族。私ではなくユイ姫さん。
しかしどう見たってシオンがユイ姫さんに忠誠があるとは思えない。

