レンが私をベッドにそっと置いて。


眠る私を見つめる。




「…気を付けてあげて。」


「……。」


「リンの免疫は人並み以下なんだ。幼児と大差ない。風邪も引きやすいし流行病への耐性もない。」


「…分かった。」



私でさえ知らない情報。


シオンは納得する部分があったようで、意外と素直に聞き入れる。




「歳を重ねる毎に人間の体は自然に抗体を形成していくはずなのに、リンはお城で過ごすことが多かったみたいだから抗体が全然ない。」


「…へえ。」


「その分薬は効きやすいけど、これがまた調薬は匙加減が難しいんだよね。」


「…もしかしてセザールの王子?」



きょとんとするレン。


どうして知っているんだろうと言わんばかりの表情。




「そうだけど。」


「……。」


「…とりあえず起きた時に薬さえ飲ませればある程度熱は引くから、リンは大丈夫だよ。」


「…そう。」



大丈夫だと分かったシオンは、少し安心したように私の側に寄る。




「…あつ。」



そっと手に触れると、想像を超える体温に顔を顰める。


一体いつからこうなっていたのかとシオンは気付きもしなかった私に呆れるしかない。



そうして大事なものに触れるように、レアな優しいシオンを見たレンは薄く笑う。




「…何。」


「怖そうな人だと思ったけど、リンには優しいからビックリした。」


「…別に。」



実はシオンもビックリしていた。


それは、アレンデールから私を奪い去って一時でも私を手に入れることが叶ったレンに怒りを感じていたにも関わらず。



いざ会ってみれば、怒る気にはならないこのレン特有の雰囲気に。