「姫様!?」


「どうされました!?」



やんごとない馬車から飛び出して、突然倒れ意識を失った私を間一髪支えたレン。


状況が読めないでいるレンだけども。




「…たぶん軽い風邪かな。休ませたいんだけど、この子ここに泊まってるの?」


「あ、はい!私の宿です!」


「部屋に案内してくれるかな。」


「もしやお医者様の御一行ですか!?」



そういえば医者の一行が宿泊する予定があると宿主さんがチラッと言っていた。


それがまさかレンだとは微塵も思っていなかった。




「あ、うん。俺も泊まるけどとにかく今はこの子が優先だから彼女の部屋でいいよ。」


「かしこまりました。ご案内いたします。」



こうして、ひょんな事件で再会してしまうことになった私とレン。


そして不穏な再会に巻き込まれるシオン。




「こちらの部屋です。中にお連れ様がいらっしゃるはずなので、ご説明お願いできますか。私は必要になる物を準備して参ります。」


「説明も準備も、こっちで対応するから大丈夫。」


「し、しかし…。」


「俺もまだ信じられないけど、一応この子の主治医だからね。」



私を抱き抱えたまま、そう言ってさっさと部屋に入ってしまうレン。


室内には一部始終窓から見学していたシオン。




「…リンの連れの人?」


「…まあ。」



面識のない二人。


そして互いに口数も多くない二人。


凍てつくようなこの空気を知る由もない私だけど、寝てて良かったと心から思うだろう。




「…また高熱だ。」


「熱?」


「身体冷やして寝ちゃったのかな。」



この国寒いんですもん。


あんまり慣れてないんですもん。