「っ…。」



瞼は重く、起きたくないと身体が言ってる。


だけど私を現実世界に引き戻す気配。戦の気配。セザールとディオンの戦が始まったような…気がする。



もっとちゃんと空気を感じ取りたい。




「起きました?」


「…起…きた。」


「じゃあ伝書の内容吐いてください。」



起きてすぐかよ。




「ちょ、と…待って。」



あー頭痛い。


寝起きの私、本当に無能すぎる。




「あー…簡潔に言うと、勝ち目のない軍を寄越すから不快でしたってことと、残党兵は割と優秀だから手を出すなってこと。ついでにまたこんなことするつもりなら自分で直接来てねって話。」


「ユイ姫にそれを言ったら火に油ですよ。」


「だからユイ姫さんにはただの嘆願書に見えるように書いたよー。総司令さんにはそうじゃないだろうけどね。」


「…俺も読んでみたい。」



分かる分かる。


私も立場が逆なら読みたいと思うよ。


けど、そんなに手間掛ける時間もなかったから単純明快な伝書になってしまったことは否めない。




「ちゃんとその内行くから首洗って待っててって書いといたからね!」


「…総司令……あ。」



総司令さんがそれを読むと知ったシオンが、急に押し黙った。




「…バレたか。」


「え?」


「…いや。こっちで何とかします。」


「うん?」



シオンの思考は分からないが、何やらお困りの様子でもあるのでほっときます。


気にならんでもないけど任せます。



とにかく、今はそれより戦だ。




「…開戦してる。」


「貴女はどの距離まで空気読めるんですか。」


「うーん。明確には分からないけど戦に関してなら、どこにいたってたぶん分かるよ。」


「便利な能力ですね。」


「戦が絡むと色々と空気が変わるの。空も山も大地も、全部の色と匂いが変わるの。」


「…俺にはさっぱりです。」



暇な人生送るのも捨てたものではない。




「明日には行かなきゃ…。あートキ怖い。」


「アキトはいいんですか。」


「アキトはどうせ私が心配で仕方ないだけで、私がやることを咎める人じゃないよ。」


「…惚れた弱みに付け込んだわけか。」