何とか住人たちの囲いを抜け、私がシオンの待つ部屋に戻ることが出来たのは部屋を出た数時間後だった。
戦闘より、火龍の力を使うより、住人達の相手して喋る方が疲れた。
「ただいまー。」
「…随分絡まれてましたね。」
「この国の姫様がよっぽど甲斐性無しだから私がマシに見えるんだろうねー。」
「それは言えてます。」
私はこんなに放置して悪いとは思いつつ、今は疲れが勝っていてシオンの相手もしんどい。
「…疲れた。」
「笛、返してください。」
「ほんとだ。忘れるとこだった。」
笛をシオンに返却。
その笛を何故かシオンが見つめている。
「どうしたの?壊してないよ?」
「…これ間接キス?」
「…変態。」
どんな思考回路してんの!?
そんな発想良く浮かびますね!?
「で、城に何飛ばしたんですか。」
「ユイ姫さんに嘆願書を送りつけました。」
「何の嘆願ですか。」
「…あーごめん。シオンには正直に言わなきゃダメだよね。」
あの嘆願書には私の策を織り交ぜた。
「宛名はユイ姫さん。名目も嘆願書。だけど中身は総司令さんへの脅迫状だよ。」
「…ふざけてます?」
「大真面目。シオンの先生なら、私の意図にきっと気付くだろうね。」
どうせ乗り掛かった船だった。
どっちみち通らねばならない道だった。シオンとトキのために通ると決めた道だったんです。
「私の打てる策の力は他国では脆くて弱い。だけど、この道だけはもう譲らない。」
もう私は、ユイ姫さんを許さない。
「この戦だけは、真っ向から姫として討ち負かす。」
「…。(これのどこが温厚なんだよ。)」
「私今回かなり燃えてるから、シオンは大船に乗った気持ちでいてね。」
「俺は俺で勝手に動くんで。」
知ってるよ。
シオンは私がどうこう出来る人じゃない。簡単に動かせる人じゃない。
「それでいいよ。でも結局、シオンが知らず知らず歩くその道は私が作るの。」
「どんな道ですか。」
「完全勝利への一本道だよ。」

