しばらく経って、鷹さんが城へ到着する前に。
私は肉眼で捉えることが出来る城に目を向ける。
「仕上げようー。」
僅かに上空に浮きつつ、右腕を城へ向ける。そこで、瞳の色を変えない範囲で。
持てる全ての炎を城に向けて放出。
私の読みではギリギリ届く。届くからやっている。何も燃やすことのない不燃の炎だが、脅しには充分だろう。
「っ…?」
少しだけ違和感を感じた。
力は使いすぎてないはずなのに、何か既に身体重いような気がする。
…ま、大丈夫か。
城へ届いた炎は、とりあえず私の力を知らしめたいだけなので。すぐに消し去る。
強大な人間離れした力を目の当たりにしたこの場の人達が、怯えたように私に目を向けている。
「ここまでしたら諦めるでしょ。」
「「(…女って怖い。)」」
振り返ってにこりと笑った私を見て兵達は、強引に笑おうと頑張っていた。
そしてアレンデールへ行く人達を即座に出発させ、エゼルタに残る人達も速やかに解散させた。
恐怖対象である兵が街から居なくなると、隠れていた住人達が入れ替わりで現れる。
「先程はありがとうございましたっ!」
「いえいえ。大したことしてないから気にしないで大丈夫ですよー。」
「度々救っていただき何と感謝を申し上げればいいか…。」
わらわらと群がる住人に囲まれる。
それぞれに感謝を述べられて、少し談笑したりと明るい雰囲気で良かった。あんな馬鹿みたいな姫の一手に落ち込むことなど何もない。
こうして前向きに生きてくれるならそれで良い。

