(二)この世界ごと愛したい




私が仮に、王族に生まれず。


一軍人として在ったなら、それでも私は民に剣は向けられない。




「国を守る軍とは民から成る。民失くして国はない。国が在るから王族とは初めて成り立つもの。だから民は守らなければならない。」


「詭弁だ。」


「つまり、守るべきものを見誤ったあなたが私は無性に腹立たしいです。」



私は認めたくないが生活力がない。


だから助けてもらう。生かしてもらう。そうしなければ存在出来ない。



軍もそう。


軍として成り立たせるためには万単位での兵が必要。その兵の大多数が一般の民であることが多い。




「この状況をきちんと頭で理解してください。あなたが守ろうとしているのはユイ姫さんの命令でも自軍の存続でもない。己の命ただ一つです。」


「なっ…!」



我ながら酷なことを言っているのは百も承知。


実際に、王族の言葉とはそれ相応の重みがある。それに刃向かえと言うのは難しいこと何だろう。



それでも、そうであったとしても。民を人質に使うのは言語道断。




「理解出来ました?理解出来たなら責任を持って次は間違えずに選択してくださいね?」


「…選択?」


「ユイ姫さんから意味不明な裁きを与えられるか、私にこの場で斬り捨てられるか。」



正解を導き出せるのなら、きっとこの人は大丈夫だろう。


昨日から何となく分かっていた。



私と相対するのは昨日も今も隊長さん。兵を犠牲にするでもなく、無駄に死なせることもせず。相手を見極め自軍をちゃんと守り抜いた。


だからこそ、先程の件が許せなかったのだ。