長考を終え。
私はシオンに一つ頼み事をする。
「ねえ、鷹さん呼ぶ笛貸してっ!」
「貴女いらないでしょ。」
「シオンの鷹さんを貸してほしいのー。」
「は?」
私の思考までは読み取っていないシオンは、疑うような目を向けながらも笛を貸してくれた。
それを持って私は宿から一人で出る。
私が促したこともあり街は既に閑散としている。家に籠ってる人もいるだろうが、街を離れた人も多いだろう。
それはどっちでもいいことだ。
私は負けはしないし、一人も傷付けさせはしない。
「…私は姫。今日は姫。姫姫姫。」
暗示のように自分に言い聞かせる。
そして、目前に迫った軍と向かい合う形になる。
「おかえりなさい?」
「…ユイ姫様の元へ同行願う。」
隊長さんが相変わらずぶっきらぼうに私に言い放つ。
「だから行かないってば。それより戻って来たってことは、まさか私に勝てる算段がついたの?」
「…ユイ姫様の命だ。大人しく投降しろ。」
「しつこいねー。ユイ姫さんのために、わざわざ勝ち目のないことする心境が理解出来ないし。」
「こちらも覚悟の上だ。」
勝ち目がないのは覚悟していると。
隊長さんがそう言ったことで、隊長さんを始め兵士もそれぞれ剣を抜く。弓を構える。
…まさに決死隊。
「…やっぱりこうなるよね。」
私も呼応し、剣を抜く。
可燃の炎で応戦すると街を燃やしかねないので、ここは一先ず剣を構えることにした。
「隊長さん。」
「……。」
「ここで戦闘が起こるとどうなると思う?」
「…街一つ犠牲になるのは仕方がないことだ。無論、こちらも手ぶらでここへ来てはいない。」
後ろから、兵士が出てくる。
この街から避難したんだろう住人らしき人を数人、その首に剣を添えて。
「昨日の一件で、正義感が垣間見えた。これが足枷になるかは疑問だが、こちらもなりふり構っていられない。」
「…そっか。」
私は人質となった住人へ目を向ける。
涙を流して、恐怖に震え、光を求める目。

